「日本人の年収の平均以上」なければ永住不可に…審査を厳格化 入管が新ガイドライン案公表 弁護士ら「使い捨ての思想」と反発

「日本人の年収の平均以上」なければ永住不可に…審査を厳格化 入管が新ガイドライン案公表 弁護士ら「使い捨ての思想」と反発

永住許可を得るには、原則として世帯の年収が日本人世帯の平均以上となっていること——。

出入国在留管理庁(入管庁)は8月4日、外国人の永住許可の審査基準を定めたガイドラインの改定案を公表。

同日、この案に反対する「入管を変える弁護士ネットワーク」共同代表の指宿昭一弁護士、駒井知会弁護士が都内で会見した。

「日本人と同等水準以上の経済条件」明記

現行の永住許可の要件は、素行が善良であること(素行善良要件)、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(独立生計要件)、そして永住が日本国の利益に合すること(国益要件)の3要件(入管法22条)である。

今回の改定案は、条文だけでは分かりにくかった審査の考え方を、ガイドラインで具体的に示すものだ。

独立生計要件では、「現在および将来において、日本人と同等水準以上の経済条件を求める」と明記した。収入は、世帯人数に応じた日本人世帯の平均を上回る水準に継続して達しているかを見る。

加えて、将来の年金の受給見込み額が、その年収水準で30年間厚生年金に加入していた場合に相当するか——という将来の要素が新たに加わった。

見込み額が足りない場合も補填できる金融資産があれば考慮され、若い申請者ほど求められる資産額は低く設定されるとしている。

国益要件では、日本語能力(CEFRでB1相当。日常的な話題を自立して扱える水準)、日本の制度への理解、学齢期の子の就学状況などが考慮要素として整理された。

ただし日本語能力は、高度人材やその家族、日本で6年以上教育を受けた人などを対象外とする例外も設けられている。日本人や永住者の配偶者などに認められてきた在留期間の特例も、婚姻期間3年から5年、在留期間1年から3年へと延ばされる。

入管庁「生涯を過ごす地位ゆえ慎重に」

入官庁は完成案の中で、永住者について、在留活動や在留期間の制限がなく、生涯を日本で過ごすことが想定される「最も安定した法的地位」と位置づけ、「特に慎重な審査を行う必要がある」と明記した。

ガイドラインの目的は「(審査の考え方を示すことで)永住を希望する外国人や、当該外国人と関係する日本人にとって永住許可の可否の予見可能性を高めるため」と説明し、あわせて、期間の制限のない永住は「我が国の発展に貢献することが期待できる外国人材を呼び込むためのインセンティブ」となり、国際的な人材獲得競争にも資するとした。

国益要件についても、単に国益に反しないだけでなく、「積極的かつ具体的に」申請する外国人の永住が、日本に利益をもたらす必要があるとしている。

もっとも改定案は、公共の負担に関する評価では家族単位での在留の安定や人道的な配慮を重視して総合的に判断するとし、一律に不許可とする趣旨ではないとも記す。

関連して同日示された永住取り消しのガイドライン案でも、対象は「一部の悪質な永住者」であり、適切に在留する大多数への偏見につながらないよう慎重に運用するとされた。

政府は今年1月、国民と外国人の双方が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる社会をめざす「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定。

基本的な考え方として、「我が国の法やルールの中で、国民と外国人の双方が互いに尊重し、安全・安心に生活し、共に繁栄する社会の実現を目指す」ことが示され、「外国人の受入れ環境整備に向けた取組も実施していく必要がある」と指摘しており、今回のガイドライン見直しもその一環だ。

弁護士「ガイドラインと言いつつ立法と同じ」

一方、4日午後に開かれた会見で、両弁護士は改定案に強く反対した。

指宿弁護士がまず問題視したのは、要件を定める手続きそのものである。入管法が求めるのは「独立の生計を営むに足りる資産または技能」までであり、「日本人の平均年収超」や「30年分の厚生年金相当」といった数値は条文にない。

指宿弁護士は「これではガイドラインと言いつつ、入管が立法しているのと同じではないか」として次のように述べた。

「行政の活動は法律に従うべきだという『法律による行政の原則』があり、憲法41条は国会を国の『唯一の立法機関』と定めています。

今回のガイドラインの改正案は、入管による国会の立法権の侵害であり、与野党を問わず政治家には声を上げてほしい」(指宿弁護士)

また、平均以下の収入でも独立して生計を営む日本人は多いとして、「平均以下で懸命に働く人に、生計を営めていないと言うに等しい」とも主張。

「平均年収に達していない日本人が、独立の生計を営んでいないというのは失礼だし『じゃあこれから平均年収以下の日本人に生活保護を出しますか』という話にもなってくる。

(ガイドラインの内容は)そういうことを言っているのに等しい。こんなめちゃくちゃなことを、しかも立法に匹敵する形で入管が勝手にやる、というのは極めて問題があると思います」(同前)

改定案の根底にある考え方についても、指宿弁護士は「外国人を労働力としては歓迎するが、生活力がなくなったら帰れと言うに等しい」とし、“使い捨ての思想”と表現。「この問題は日本の国の行く末を占う重要なテーマだ」として慎重な議論を求めた。

「永住資格を取って暮らしている人、また永住資格を取ろうと取ろうとしている人たちの実態をしっかり社会に伝えつつ、国会でもしっかり議論してほしいし、経済界も声を上げてくれることを期待します」(同前)

配信元: 弁護士JP

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