関税を払う側のアメリカが政策を進めるわけ

ちなみに件のWSJの記事は、トランプ大統領の発言や関税を正しく理解していない人を批判したものではなく、趣旨は以下の通りです。
・7月の生産者物価指数(PPI)は前月比0.9%、過去1年間では3.3%上昇し、関税により輸入品の仕入れ値が高くなっているものの一般家庭は物価上昇を「まだ」実感していない。
・ただし企業が払うコストが将来、消費者に転嫁される可能性はある。
・関税によるコスト上昇が見える形になれば、政治的な責任を有権者に問われやすくなる。
この記事には、コメント受付中に3000件近くに上る意見が寄せられ、関心の高さがうかがえます(現在は受付終了)。「関税は戦略的なメリットを持つ政策手段」などといった賛成派と「関税を払うのは結局アメリカの消費者だ」とする反対派の間で意見は大きく割れています。
関税を支払うのはアメリカ側なのに、大統領が政策を進めている理由はいったい何でしょうか? この疑問に答えてくれそうな記事が9月半ばに英BBCでアップされたのでここで紹介しておきます。
What tariffs has Trump announced and why?
(トランプ大統領はどんな関税を発表したのか。そしてその理由は?)
トランプ大統領が関税政策を推し進める理由として、記事はアメリカの製造業が活性化し雇用が創出され、政府の税収が増え、消費者に対して米国製品の購入や国内での投資が促進されるとのトランプ氏のこれまでの主張を紹介しています。
加えて大統領が貿易赤字(他国から購入する商品の価値と他国へ販売する商品の価値のギャップ)を縮小したいと考えていることや、アメリカが「チーター(騙す人たち)」に搾取(利用)され、外国人によって「略奪」されてきたとする大統領の主張にも触れています。
対中国、対メキシコ、対カナダの関税は大きな社会問題となっている不法移民や違法薬物の流入を阻止する目的があること、対ロシアの関税はウクライナへの軍事侵攻を終結させる要求のためなどといった説明もあります。
トランプ関税の行き先が今後どうなっていくのか、引き続きさまざまな動向を見守っていく必要がありそうです。
