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日本人初のダガー賞受賞作家・王谷 晶さんが読み返すたびに書くことの原点に戻る一冊。『呪い』より。

日本人初のダガー賞受賞作家・王谷 晶さんが読み返すたびに書くことの原点に戻る一冊。『呪い』より。


書くことの原点に戻る、アンカーポイントとしての言葉。

18、19歳の頃、古本屋の百円均一棚で手に取った短編集。当時、ボロアパートで先の見えない閉塞感を持っていた自分にバチッとはまりました。辛い話しか載っていなくて、それでいてどこかロマンチック。意地悪な目線と皮肉なユーモアも含まれている。そして、生身の人間を膾に叩いて、その体が目の前に転がされたような生々しい文章。こんな人間の描き方があるのか、とショックを受けました。特に冒頭の一篇、「片腕」の、死刑囚となる青年が語るこの台詞は書き手としては忘れてはいけない。どんな人間にもその中に心があるんだ、ということ、もしそれを忘れたらもう小説は書けなくなる。アンカーポイントというか、読み返すたび自分の書きたいことの原点に戻れるような気持ちになるのです。

『呪い』著 テネシー・ウィリアムズ 訳 志村正雄 河野一郎 (白水Uブックス)

王谷 晶 Akira OtaniSelector

小説家。東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『40歳だけど大人になりたい』など。サム・ベットの英訳による『ババヤガの夜』で、2025年英国推理作家協会賞(ダガー賞)の翻訳部門を日本人として初受賞。

illustration : Shapre text : Azumi Kubota

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配信元: & Premium.jp

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