
話を聞いたのは現在、タイのパタヤに住みながら、チョンブリー県の日系メーカーで現地採用として働く小倉敬一さん(仮名・40代)。彼がそう語るのは、かつて同じ会社で働いていた先輩である“カナイさん”(仮名)のことだ。
◆タイ出向で夜の店にハマった先輩

タイといえば、ゴーゴーバーやバービアといった、華やかなナイトライフを思い浮かべる人も多いだろう。そのすべてが密集しているのが、バンコクから車で2時間半のリゾート地、東南アジア屈指の歓楽街・パタヤである。
「日系企業ではトラブル防止のために“海外の夜の店への出入り禁止”を通達していることも多いんですよ。うちの会社も以前は社宅がパタヤにあったんですが、女の子を無断で連れ込むなど、あまりにも問題が多かったため、なくなりました。でも、カナイさんはそんなルールを気にするタイプではなかったんです」
◆旅行だけでは飽き足らず……ついに退社

「いずれはこっちで暮らしたいなんて言ってましたけど……。まだ50代で定年まで全然あったのに、突然、『会社を辞めてタイに住む』と言い出すとは思いもしませんでした。しかも、結婚まですると。相手はパタヤの飲み屋で知り合ったというタイ人女性でした」
カナイさんはさらに驚くことを言い出した。
「なんと、『嫁と一緒に日本食屋をやる』と言い出したんです。しかも、『親戚が飲食をやってるから自信がある』と、なぜか自信たっぷりでした。でも、カナイさん自身にはビジネス経験もないし、ましてやタイ語も話せない。しかも場所を聞くと、パタヤではなく、奥さんの実家近くの田舎町だというんです。日本人も一応住んではいるものの、その多くはリタイア層。パタヤを含めて地方に住むリタイア層は基本的に節約志向で安いローカル飯を食べたり、自炊する人が多いです。よほどコスパが良い日本食屋じゃないとなかなか流行らないので、正直、“大丈夫か?”と思いました」
バンコクやシラチャと違い、現役世代の駐在員やビジネスマンはほとんど住んでいない場所。そのため、飲食店のターゲット層が限られてしまうのだと小倉さんは語る。

