高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 高市首相は広島・長崎と批判されたが...非核三原則「持ち込ませず」見直すべき理由

平和式典に出席した高市早苗首相がオールドメディアから態度が悪いとか批判されている。SNSでも批判されているらしいが、これはもともと批判ばかりのXでの話だ。

長崎市の式典で献花する高市早苗首相(首相官邸ウェブサイトから)

筆者は、この季節になると、オールドメディアやその系統の記者が書く、ステレオタイプの記事には正直言って食傷気味だ。戦争や核兵器の悲惨さを訴えるのはいい。しかし、戦争させない、核兵器を使わせないために、日本がどう行動したら合理的かの議論がない。というと、非核三原則、憲法9条の堅持という答えが返ってくる。

なぜ世界中の国々には憲法9条も非核三原則もないのか

もし、憲法9条と非核三原則の組み合わせが、核兵器と戦争回避のために有効ならば、世界中の国が採用しているはずだ。日本政府が承認している国の数は195か国。このうち、核兵器保有国とされるのは、核拡散防止条約(NPT)を批准している核兵器国のアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国。NPTを批准していないインド、パキスタン、イスラエル、計8か国。これ以外に日本が承認しておらず、NPT脱退を主張している北朝鮮も「核保有国」を名乗っている。

残り187カ国でみると、憲法9条も非核三原則もない国がほとんどだ。

先進国に限ってみても、もちろん日本の憲法9条と非核三原則と同じ国はない。日本の憲法9条の軍隊を持たない、交戦権がないとの規定や、非核三原則も日本に持ち込ませずには、強すぎる。それらを除いて、「似たようなものを持つ国」を探すと、ニュージーランド、オーストラリア、スイス、アイルランド、スウェーデン、ドイツ、イタリア、韓国とある。

ここで、これらの国はすべて軍隊を持つ。日本にも自衛隊があるではないかというが、これは法的には行政組織であり、出来ることを規定するポジティブリスト方式に従う。世界の軍はしてはいけないことを記すネガティブリスト方式なので、有事の対応力は天と地ほどの差がある。しかも、オーストリア、アイルランド、スイスは非同盟だが、その他は軍事同盟がある。日本も日米同盟があるが、軍隊がないので、相互的でなくアメリカにおんぶに抱っこの片務的だ。

「核の傘」に頼りながら「持ち込ませず」という矛盾

実はこの点に、日本の矛盾が出てくる。アメリカの核の傘の中で、非核三原則を唱えている。しかも、非核三原則で持ち込ませずなのに、どうやって核の傘が機能するのか。

非同盟の欧州3か国は、欧州の中で自国のみが核の脅威にならないという前提がある。

北大西洋条約機構(NATO)の3か国はNATOの核の傘がある。韓国もかつてアメリカの戦術核があったので制度的制約はない。ニュージーランドは同盟国が事実上オーストラリアで持ち込ませずなので、核の傘はない。ただし、地理的な関係で今直ちに脅威があるわけでない。

しかし、日本は、周辺に核保有国が三つもある危険地帯だ。これから出てくる論理的な帰結は、アメリカの核の傘を十分に機能させるには、少なくとも持ち込ませずという非核三原則の一部の見直しから始め、その次にはNATOと似たような核シェアリングの議論が必要だ。そうした戦争を回避すらための議論なしで、いたずらに戦争の悲惨さだけをいっても有益でない。

ちなみに日本では、この時期になると、核兵器禁止条約を批准せよとの意見が出る。しかし、アメリカとNATOとの同盟を組む国で、核の傘を放棄するに等しい。そんな意見は当然ない。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはしよういち)元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

配信元: J-CASTニュース

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