
親が亡くなると、さまざまな手続きや葬儀の準備等にお金が必要です。ところが、亡くなった親の銀行口座が凍結されてしまい、直近の支払いに困る場合は少なくありません。今回は、口座が凍結されてしまったときに活用できる「預金の仮払い制度」の仕組みと注意点等について、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。
なぜ口座は凍結されるのか?
銀行は、口座の名義人の死亡を把握した時点で、該当の口座を凍結します。なぜなら原則として、人が亡くなるとその人の財産はすべて「相続財産」となるからです。
これは相続トラブルや不正な引き出しを防ぐための銀行側の措置です。遺産分割が完了するまでは、誰がそのお金を受け取るのかが確定していないため、銀行は「トラブル回避のために口座を止める=凍結する」対応を取るのです。たとえ家族であっても、名義人が亡くなったあとに勝手にお金を引き出すことはできません。
葬儀費用が払えないときに使える「預金の仮払い制度」
ところが、口座が凍結されると葬儀費用などの急な支出に対応できず、困る人も出てきます。そんなときに利用できるのが、2020年に新設された「預金の仮払い制度」です。
制度創設以前は、被相続人(亡くなった方)の預貯金は、遺産分割協議が終わるまで1円も引き出せないのが原則でした。
しかし、これでは葬儀費用などの緊急資金が用意できないという問題が多発したため、家庭裁判所の関与や相続人全員の同意がなくても、一部を払い戻せる仕組みが導入されたのです。
