日本弁護士連合会(松田純一会長)は8月17日、出入国在留管理庁(入管庁)が推進する「不法滞在者ゼロプラン」および、その強化策である「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」に反対する会長声明を発表した。
声明では、難民認定申請の類型化を拡充して審査の迅速化を促進することや、要件を満たさなくなった被仮放免者などを収容したうえで帰国説得を重点的に実施することについて「国際人権法が求める人権の保障と相容れない」と指摘している。
子どもの送還など「国際人権法に反するおそれ」
日弁連は、入管庁が2025年5月23日に発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」について、同年7月22日付の声明で「国際人権法に反する」と指摘していた。
入管庁の統計によると、送還停止効の例外規定(※)による3回目以降の難民認定申請者への送還は、2024年の17人から、ゼロプランが発表された2025年には52人へと約3倍に増加した。
※2024年6月施行の改正入管法により導入された制度で、原則として難民認定申請中は送還が停止される(送還停止効)が、3回目以降の申請者など一定の場合に例外として送還を可能とする規定
報道によれば、仮放免の更新のため入管庁に出頭した男性が、適法に在留する妻と子を残して、出頭の翌日に強制送還された事例があるという。声明は、こうした家族分離は家族生活に対する重大な侵害であり、日本が批准している「自由権規約(B規約)」や「子どもの権利条約」に反するおそれがあると指摘。
また別の報道によると、トルコでの迫害を理由に難民認定を申請していたクルド人家族5人が、仮放免の更新のため入管庁に出頭したところ収容され、護送官付き国費送還(※)によりトルコへ強制送還された事例もある。父親は反政府的な言動を理由に帰国後に身体拘束されることを恐れていたが、実際に、空港到着直後に逮捕されたという。
※国が費用を負担し、係官が同行して本国まで送還する措置
声明は、このような事例は、迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる国際法上の原則である「ノン・ルフールマン原則」との関係で重大な問題を提起するものと訴えている。
さらに、2025年1月から8月までに護送官付き国費送還の対象となった18歳未満の子どもが7人いたことにも触れ、子どもに及ぼす悪影響を十分に検討しない送還は子どもの権利条約に反するおそれがあると指摘した。
「全ての人の尊厳と権利を守る共生社会の実現」を求める
「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」は、難民認定申請の「B案件」の類型化を拡充して審査の迅速化を促進することや、要件を満たさなくなった被仮放免者・被監理者らを収容したうえで、帰国説得を重点的に実施することを掲げている。
「B案件」とは、難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件を指す。難民認定申請のB案件への振り分けは長らく年間1%前後で推移していたが、類型化が導入された2025年には14.3%へ急増した。一方、具体的な振り分け基準は公表されていない。
声明はB案件への振り分けの妥当性を外部から検証することは不可能であると指摘したうえで、こうした状況で類型化を拡充すれば、難民として保護されるべき者を見落とす危険が著しく高まると訴えている。
また「収容したうえでの帰国説得」についても、収容は本来なら逃亡や罪証隠滅を防止するための制度であり、帰国を説得するための手段ではないと指摘しつつ、以下のように述べている。
「身体の自由を奪われた状態で帰国を説得されれば、多くの人はその心理的圧力に抗うことが困難であり、その苦痛は収容により受ける不利益を著しく増大させる。
こうした実態を顧みず、帰国説得のために収容を利用することは、収容制度の趣旨を歪め、帰国説得を収容の実質的な目的として位置付けるものと言わざるを得ない」
声明の最後では「ゼロプラン及び本パッケージは、保護されるべき者への重大な人権侵害を顧みておらず、国際人権法に反するものである」としたうえで、「全ての人の尊厳と権利を守る共生社会の実現」を求めている。

