『ラヴ上等』法務省タイアップに「更生を美化すんな」 国は“広報”強化の一方…炎上背景に“再犯率46%”立ち直りの厳しい現実

『ラヴ上等』法務省タイアップに「更生を美化すんな」 国は“広報”強化の一方…炎上背景に“再犯率46%”立ち直りの厳しい現実

Netflixのリアリティーシリーズ『ラヴ上等』と法務省保護局がタイアップして制作したポスターが、8月上旬から全国の保護観察所など関係機関に約2000枚配布され、掲出されている。

「更生上等!!」「立ち直りって、ラヴだ」といったキャッチコピーのもと、全身に入れ墨を入れた出演者らが並ぶインパクトの大きいビジュアルは瞬く間に注目を集め、SNS上には「さすがにダメでしょ。被害者のことも考えようよ」「更生を美化すんな」「国が乗っかるのは違うんじゃ無いか?」などさまざまな意見が投稿された。

「更生」をめぐっては、昨年6月に改正刑法の施行によって受刑者の処遇が刷新された。国は、再犯防止推進計画にのっとり、広報・啓発活動の推進にも力を入れている。一方で、再犯者率は約46%に達するなど、立ち直りの厳しさを示す公的データも存在する。

法務省が『ラヴ上等』とタイアップした意図

法務省は8月5日、報道発表資料を通じてタイアップの実施を公式に発表した。

同資料によれば、『ラヴ上等』は「ヤンキーの男女たちが血の気たっぷりに繰り広げる純愛リアリティーショー」であり、「参加者それぞれが過酷な生い立ちや過去の罪など生きづらさを抱えながらも自分と向き合い、葛藤し、他のメンバーや地域の方々との関わり合いの中で少しずつ成長していく姿が描かれており、更生保護が大切にしている『人は変われる。一緒なら』というメッセージとも通じる」ことから、タイアップに至ったと説明している。

報道によれば、タイアップの経緯についてはNetflix側から法務省保護局に打診があり、同局が番組内容を確認した上でコラボを決定したという。担当者はメディアの取材に対し、番組が単なる恋愛リアリティーショーではなく、生きづらさや葛藤を抱えた出演者がボランティア活動などを通じて自分自身を見つめ直していく作品であるとした上で、「更生保護の理念と合致すると判断した」と説明した。

さらに、ポスターへの批判的な声に対しては「真摯に受け止めていきたいと思っているが、決して犯罪を肯定するものではない」と強調。掲出スケジュールに変更はなく、9月上旬まで予定されているという。また、担当者は「更生保護の取り組みや、社会復帰の必要性を知っていただくきっかけになればと思っております」とも語っている。

更生保護とは、犯罪や非行をした人が自立し改善更生することを助け、安全安心な地域社会の実現を目指す活動だ。国の機関である保護観察所や、民間ボランティアである保護司が中心となり、仮釈放後の生活環境の調整や保護観察による指導・支援などを担う。

データが示す「立ち直り」の厳しさと重要性

こうした議論と並行して、再犯防止の難しさを示す公的データも存在する。

法務省が公表している「再犯防止推進白書(令和7年版)」によれば、刑法犯検挙者中の再犯者数は2024年に8万8697人に達し、再犯者率は46.2%だった。2023年(47.0%)からは0.8ポイント減少したものの、検挙される人物のおよそ半数が再犯者であるという水準が長年続いている。

また、出所受刑者の2年以内再入率についても、2023年出所者では13.8%という数字が記録されている。同指標は改善傾向にあり、過去に設定された数値目標(2021年までに16%以下)を達成しているが、出所事由別に見ると、仮釈放者の9.6%に対して満期釈放者は20.8%と依然として高い水準にある。

これらの数字は、刑事施設を出た人が社会に定着するまでの道のりの困難さとともに、犯罪を抑止するうえで更生保護・再犯防止への取り組みがきわめて重要な役割を担っていることを端的に示しているといえるだろう。

なぜ国は「広報」を重視するのか

今回のタイアップを読み解く上で、上述した更生保護への取り組みの重要性とともに、それを踏まえた近時の制度改正等も押さえておく必要がある。

一つ目が、2025年6月1日に施行された改正刑法による「拘禁刑」の創設だ。明治40年(1907年)の刑法制定以来初めて刑罰の種類が変更され、「懲役」と「禁錮」が廃止されて新たな「拘禁刑」に一元化された。

最大の変更点は、従来、懲役刑の受刑者には作業を課し、禁錮刑の受刑者には課さないという一律的な処遇を行っていたのを改め、個々の受刑者の特性に応じて作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇が可能になったことだ。

法務省矯正局の資料によれば、「受刑者自身が指定された作業等を『やらされる』と思いながら取り組むのではなく、自分のこととして『考える』ように働き掛けることがこれまで以上に重要」とされ、改善更生への内発的な動機づけを重視する方向へ大きく舵が切られた。

二つ目が、2023年3月に閣議決定された「第二次再犯防止推進計画」だ。この計画は2023年度から2027年度末までの5年間を計画期間とし、就労・住居の確保や保健医療・福祉サービスの利用促進など、7つの重点課題を掲げている。

注目すべきは、重点課題の一つ「再犯防止に向けた基盤の整備等」の具体的施策として「広報・啓発活動の推進」が明記されている点だ。同施策は「広く国民各層に訴える広報媒体や広報手法を用いるよう努める」としている。

「広報」と「被害者感情」のはざまで

ただ、法務省と『ラヴ上等』のタイアップポスターに対しては批判的な声も相次いだ。

SNS上では、出演者の一人が過去に「人に火をつけた」とエピソードを語った場面が拡散し、炎上。法務省とのコラボに対しても、冒頭で紹介したように「さすがにダメでしょ。被害者のことも考えようよ」「更生を美化すんな」「国が乗っかるのは違うんじゃ無いか?」といった声が散見された。

一方で、番組はNetflixが8月15日に発表した日本での週間視聴ランキング(8月3〜9日)で映画以外の部門1位を獲得し、海外でも上位にランクインしている。広く視聴されているという事実は、更生保護の広報媒体としての潜在的な影響力を示してもいる。

「更生保護の取り組みの認知度が低い」という課題は実在する。前述の通り、第二次再犯防止推進計画は具体的施策の中で、「広く国民各層に訴える広報媒体や広報手法を用いるよう努める」と明記している。

しかし、同時に第二次推進計画は「犯罪被害者等が存在することを十分に認識して行う」ことを基本方針ともしている。今回の議論は、広報効果の向上という視点と、被害者感情への配慮という視点が、一枚のポスターの上でぶつかり合った構図でもある。

問われる公的機関の発信のあり方

拘禁刑の導入と第二次再犯防止推進計画という制度的な転換が相次ぐ中、再犯防止と社会復帰支援に関する施策は新たな局面を迎えている。受刑中の処遇が「やらせる」から「考えさせる」方向へと変わりつつある中で、社会全体の理解や受け入れ環境の整備も不可欠な要素となる。

法務省が「更生保護の取り組みや、社会復帰の必要性を知っていただくきっかけ」と語る姿勢は、その必要性の認識を示している。一方で、再犯者率が約半数に達するという厳しいデータは、制度整備だけでは解決しない問題の根深さを示してもいる。

「どのようなメッセージを」「どのような表現で」「誰に向けて」発信するのか。今回のタイアップをめぐる議論は、更生保護=再犯防止という重要な政策課題を実現するための発信のあり方を社会に提示する形となった。

配信元: 弁護士JP

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