「55歳で辞めても、退職金の割増は42か月分。その倍くらいなら考えるかもしれないが、定年が70歳に延びるかもしれないのに、今辞めるわけにはいかない」――。沖電気工業グループで早期退職の対象とされた女性社員は、胸の内をこう明かしたという。
同社は7月15日、グループ36社の55歳以上・勤続10年以上の社員ら約4000人を対象に、早期退職を促す「セカンドキャリア支援制度の特別措置」を発表。
株主配当の大幅増配を決めた直後の人員削減に対し、電機・情報ユニオンは8月18日に都内で会見し、黒字リストラの撤回を求めて団体交渉を申し入れたと明らかにした。
高配当と同時に打ち出された人員削減
沖電気は通信機器などを主力とする大手電機メーカーだ。2026年3月期の売上高は4216億円、営業利益は188億円で、営業利益率は4.5%の黒字を確保しており、株主配当は前年比1株20円増の65円・総額56億円に増配。ユニオン側によると、近年で最も高水準だという。
一方、社員数は1万1925人と前年から1981人減っており、そこへさらに約4000人(グループ全社員の3割)規模の早期退職募集が重なった。ユニオンは、パナソニックの1万2000人、過去最高益のなかで約4700人を削減した三菱電機に続く動きとみる。
同社は本年度から「経営計画2031」を掲げ、売上高を約1.5倍へ伸ばす目標を打ち出している。ユニオンは、グループ従業員1人当たりの内部留保が2012年の124万円から2026年には1293万円へ膨らんだと指摘し、"体力があるなかでの人員削減"を疑問視する。
早期退職者の募集期間は8月17日から9月25日まで、退職日は10月31日とされ、通常の退職金に「特別加算金」を上乗せする。ユニオンの資料によれば、加算金は正社員で55〜58歳が基準内賃金の42か月分、59歳が30か月分、60歳が18か月分だ。
「退職を迫る話ではなかった」それでも広がる不安
早期退職者の募集直後から全社で面談が始まったといい、ユニオン側の聞き取りに対し、ある女性社員は「部長から面接があり、制度の説明と個別の特別加算金の提示を受けた。特に退職を迫るような話ではなかった」と回答。50歳代の男性社員も「退職金を提示されたが、退職するつもりはないと断った」とした。
事業の譲渡や合弁など再編も重なり「自分の部署が対象になるのでは」との不安が広がっているといい、「シニア社員なのに突然の説明で、十分な説明がない」「給料が高い人が多くいるので辞めさせたいのではないか」といった戸惑いも寄せられた。
会見で米田徳治特別執行委員は、募集人数を「特に定めない」としている点をまず問題視する。「一般的なリストラで人数を定めないことはあり得ない。人数を定めないことで、労働組合との協議がほとんど行われていない」と指摘した。
米田氏がもう一つの争点に挙げたのが、60〜65歳の再雇用労働者が早期退職の対象に含まれる点だ。
米田氏は「本人が希望して働く再雇用者に、早期退職を促すのは、高齢者に対する攻撃だ」と述べ、今回の措置に強い警戒感を示した。
一方、会社側の言い分は異なる。ユニオンによると、沖電気は申し入れの際「今は社員をリストラするような状況ではない。労働者を解雇するための施策ではない」と説明したという。
ユニオンは沖電気工業と、子会社の株式会社OKIソフトウェアの双方に団体交渉を申し入れた。要求は特別措置の中止と、退職強要面談を行わないこと、そして2026年4〜6月期決算などの資料に基づく説明だ。
沖電気には8月28日、OKIソフトウェアには9月1日を候補日に挙げ、21日までの文書回答を求めている。
なお、本件について弁護士JPニュース編集部が取材を申し入れたところ、沖電気工業の広報・プロモーション室は「個別の労使交渉に関わる事項であるため、コメントは差し控える」と回答した。

