8月16日、フードデリバリーサービス「ロケットナウ」(運営は「CP One Japan合同会社(東京都港区)」)の配達員とみられる人物が、配送中の商品を開封して食べる様子を撮影した動画がSNSで拡散された。
動画には、2人の若者が配達用のバッグから商品とみられる食べ物を取り出し、その一部を食べる様子が映っている。
Xでは「完全に窃盗やん」「客が金払って頼んでた品物を勝手に開けて食ってるって、普通に犯罪だろ」「窃盗しているところ撮影して、SNSにあげるってどういう神経してんだろ」などのコメントが投げかけられている。
弁護士が指摘するのは、動画に映った若者たちの行為は窃盗罪のみならず横領罪に該当し得ること、またつまみ食いされた客に対してだけでなく会社に対しても損害を賠償する責任が発生する可能性があるということだ。
ロケットナウ「一切容認いたしません」
ロケットナウは8月17日、公式Xアカウントに「SNS上で投稿されている動画については認識しており、現在、事実関係の確認を進めています」と投稿。
投稿では、仮にドライバー(配達員)が客に届ける配送中の商品を無断で飲食または窃取する行為があった場合、そのような行為は法令およびロケットナウのドライバー向け利用約款に反する、と説明している。
そのうえで「本件については、事実関係が明らかになり次第、関係法令および利用約款等に基づき厳正に対処いたします」と表明した。
「つまみ食い」なら窃盗罪だが…
刑法に詳しい三木悠希裕弁護士によると、配達員が客に届ける途中の商品を開封して一部を「つまみ食い」する行為は、Xでも指摘されている通り「窃盗罪」(刑法235条)に該当する。法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ。
一方、商品の一部を食べるのではなく、客に届けずに丸ごと持ち去った場合には「業務上横領罪」(刑法253条)が成立する可能性があるという。
法定刑は10年以下の拘禁刑。罰金刑がないことから、窃盗罪よりも重い処罰となる可能性が高い犯罪といえる。
損害賠償を請求される可能性も
では、民事上の責任についてはどうか。
三木弁護士によると、配達員が商品を「つまみ食い」することは、客に対しては民法上の「不法行為」、運営会社に対しては「債務不履行」にあたり、損害賠償責任が生じる可能性もある。
すなわち、本来なら依頼した客のものである商品が配達前に一部を食べられてしまえば、少なくとも減った分が客にとっての損害となる。
また、つまみ食いによって商品の衛生状態に問題が生じた場合、その商品を客に配達しても「注文された商品を適切な状態で客へ届ける」という義務を履行しなかったと評価される可能性がある。
その場合、客との関係で不法行為が成立し、商品の全額について、つまみ食いをした配達員が賠償責任を負うことも考えられる。また、運営会社との関係では債務不履行が成立し、損害賠償義務を負うことになり得る。
次に、つまみ食いの様子が映った動画を拡散した点については、運営会社に対する「不法行為」として損害賠償責任を負う可能性があるという。
今回の動画は、本当に配達する商品をつまみ食いしたのか、それとも自身で購入した商品をつまみ食いしているように撮影しただけなのか、詳細は不明だ。
しかし、「ロケットナウの配達員がつまみ食いをしている」という内容の動画を投稿する行為それ自体が、運営会社の名誉・信用を傷つけるものと評価される可能性がある。
したがって、会社側から動画を投稿した人物に対し、名誉・信用を傷つけられたことを理由とする損害賠償を請求されることも考えられるのだ。
フードデリバリーをめぐっては、配達員による商品の無断飲食にとどまらず、配達先に侵入して性的暴行を行った事例や、配達員を装っての犯罪など、さまざまなトラブルが起きている。
今回の騒動は、配達員のモラルを問うだけでなく、会社側が配達員をどう管理し、利用者の信頼と安全をどう守っていくのかという課題も浮き彫りにするケースといえそうだ。

