「働いて身を削り、次は健康を…」花粉症薬など“保険除外”で年数万円の負担増も? 現役世代の家計圧迫に医師・患者ら撤回要望

「働いて身を削り、次は健康を…」花粉症薬など“保険除外”で年数万円の負担増も? 現役世代の家計圧迫に医師・患者ら撤回要望

「働いて身を削り、食費を削り、娯楽を諦め、住まいや車を諦めて、次は健康を削らなければならないのか」――。アトピー性皮膚炎などに長く苦しむ30代の患者は、国にそう訴えた。

市販薬と似た薬を保険から外す動きは、働き盛りの世代にも及ぶ。毎年の花粉症で内服薬に点眼薬、点鼻薬を処方される現役世代の場合、月1500円ほどの負担増を迫られる一方、国が掲げる「保険料軽減」は月33円ほど。

影響は個人にとどまらない。アレルギー性鼻炎による労働生産性の低下は年約10兆円の損失に当たるとの推計もある。

厚生労働省が進めるOTC類似薬(市販薬と成分が似た医療用医薬品)の保険除外をめぐり、全国保険医団体連合会(保団連)が8月19日、都内で会見。見直しを求めた。

アレルギー薬「4割超が配慮対象外」

厚労省は、がん患者や難病患者など一部を追加負担の対象外とする「配慮措置」を設けている。だが対象薬を使う9641人への緊急調査では、花粉症やアレルギー性鼻炎の患者の4割超がこの配慮から漏れると判明。医師や患者は「これは“配慮”ではなく“排除”だ」と声をそろえた。

厚労省が保険除外の対象とするのは、市販薬と成分が似た医療用医薬品77成分・1100品目だ。処方された場合、通常の窓口負担とは別に追加料金が求められる。

がん患者や指定難病患者、長期処方などの場合は「配慮対象」とされる一方、花粉症やアレルギー性鼻炎に使われるアレグラ、アレジオン、点鼻薬などはこの線引きから外れやすい。

保団連副会長で、医師の井上美佐氏によると、花粉症・アレルギー性鼻炎の患者は20〜50代が8割超を占め、まさに働き盛りの世代が中心だという。

だが、花粉症は季節性のため、多くの場合、配慮の対象から漏れる。実際、保団連の調査でも配慮の類型に「いずれも該当しない」と答えた人が42.1%と最多で、井上氏は「4割以上の患者は配慮されず、薬の値段が上がる」と説明。

「アレルギー性鼻炎による集中力低下などで労働生産性が落ち、日本全体で年約10兆円の経済損失に当たると推定されている。影響は個人の負担にとどまらない」と井上氏は続けた。

軽減は月33円、負担増は月1500円

厚労省は保険除外の理由として「医療用医薬品の給付を受ける患者と市販薬で対応している患者との公平性の確保」を掲げている。

これに対し、保団連副会長で名古屋の勤務医、橋本政宏氏は「重大な改悪だ」と批判。「すでに保険に収載されている薬を、政府の一存で対象から外す仕組みが作られた」と指摘した。

保団連の試算では、削減される医療費は年900億円にとどまり、保険料の軽減効果は加入者1人あたり月33円程度だという。一方で、花粉症で内服薬・点眼薬・点鼻薬を処方されれば月1500円ほどの負担増になると見積もる。保団連は、差し引きではむしろ負担が膨らむと試算する。「軽減される保険料は、あっという間に吹き飛ぶ」と橋本氏は語った。

記者から“配慮すべき患者と、そうでない患者を分ける発想”について問われると、橋本氏は「我々の発想には全くない」と即答。

「症状を抱えて受診した患者に、原因を明らかにして治療する。誰であろうが同じようにすべきで、この患者は救うがこの患者は救わなくていい、という発想は皆無だ。“配慮する必要のない患者”という言葉に強烈な違和感がある。そんな患者はいない。みんな同じように扱わなくてはいけない」と続けた。

また、井上氏は湿布や保湿剤、ステロイド外用薬、便秘薬などが市販薬に置き換えられること自体に懸念を示す。「命に関わらないから大丈夫と甘く見ているのではないか。外用薬が使えず体を壊す人もたくさんいる」と述べた。

「湿布は労働者の安全と命を守る薬」

会見場には、当事者も並んだ。関節リウマチで30年以上治療を続ける東京土建一般労働組合の渡辺義久氏は、自身が使う痛み止めの湿布を掲げた。

渡辺さんの関節リウマチは難病に指定されておらず、湿布は配慮対象外。同じ7枚入りでも、ドラッグストアで買えば約1800円、医療機関で処方されれば3割負担で約40円だという。

渡辺氏は「早朝から動き、休めば収入が途絶える。受診したくてもできない事情がある」と、日給月給で働く建設現場の実情を語る。

高所作業では痛み止めを背中に貼っているといい、「一瞬の集中力が欠ければ命取りになる。湿布は労働者の安全と命を守る薬だ」と訴えた。

「殺さないでください」10万筆超の署名

皮膚の難病「魚鱗癬」を抱える息子を持つ大藤朋子さんは、アトピー性皮膚炎などを患う30代の患者から寄せられた声を読み上げた。

「一年の大半、腕や指をかきむしっては血みどろになり、そのつどステロイドにお世話になっている。働いて身を削り、食費を削り、娯楽を諦め、住まいや車を諦めて、次は健康を削らなければならないのか。どうか再考してください。元に戻してください。殺さないでください」

保団連事務局次長の本並(もとなみ)省吾氏によると、保険除外に反対するオンライン署名は約10万3000筆に達したという。

大藤さんは会見をこう締めくくった。「本来、国は国民が安心して医療にかかれる制度を作らなければいけない。ぜひ患者の立場に立って検証してほしい」

配信元: 弁護士JP

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