いつまでも輝く女性に ranune
年金月25万円・貯金2,800万円の70代夫婦「たった1年で500万円喪失」に悲鳴。原因は、幸せな家庭を築いていた45歳息子からの「まさかの電話」

年金月25万円・貯金2,800万円の70代夫婦「たった1年で500万円喪失」に悲鳴。原因は、幸せな家庭を築いていた45歳息子からの「まさかの電話」

増える“親の支援”――リストラ40代を抱える高齢世帯の現実

東京商工リサーチの調査(※)によると、2025年上半期の早期・希望退職者は前年の約2倍に増加。また、45歳以上の社員が半数を超える企業は全体の6割にのぼり、中高年層の再就職難が深刻化しています。そのため、正志さんのような「リストラ→離婚→実家帰還」という“負のスパイラル”にはまることは、いまや珍しい話ではありません。

総務省の家計調査によると、無職の高齢夫婦世帯の平均支出は月26万円前後。年金だけでは赤字が続くなか、同居家族の生活費や特別支出を負担すれば、貯蓄は急速に減少します。

田中さん夫妻の場合、約500万円の貯蓄を取り崩しました。車の買い替えといった一時的な支出を含むとはいえ、このペースが続けば老後資金は数年で大幅に減少します。

「息子に罪はない」という親心は自然ですが、老後資金は一度崩すと戻りません。医療・介護費を考えると、子への援助は老後破綻リスクを高めます。

支援の「線引き」を――家族の自立を促すためにできること

子どもへの援助をやめるのは辛い決断ですが、“共倒れ”を防ぐためには支援の範囲を明確にすることが欠かせません。田中さんの場合、まずは、息子さんにかかる費用を「見える化」し、支援額の上限を決めることです。項目ごとに整理すれば、「どこを削るか」が明確になります。

支援の範囲は、たとえば以下のように具体的に決め、さらに書面に残すことも重要です。

・食費・光熱費は親負担

・通信費・交際費は本人負担

・養育費は本人が確保

・支援期限は1年以内

再就職は、正社員にこだわらず「まず収入を得る」ことを優先したいところです。ハローワークの再就職支援やミドル向け求人を活用すれば、月10万円でも家計の負担は大きく減ります。

また、親自身の家計も見直しが必要です。現在の貯蓄2,300万円のうち、医療・介護費用として1,000万円は「絶対に崩さない資金」として確保することが望ましいです。

親の愛情は無限でも、老後資金は有限です。息子の自立を促すことは冷たいことではなく、双方の生活を守るための“現実的な選択”です。「支援の線引き」は、家族の未来を守るための第一歩なのです。

そのあと、田中さん夫妻は、正志さんを交えて家族会議を開いたといいます。支援の範囲と期限を明確にした結果、正志さんは地元の同級生の紹介で、派遣社員として働き始めました。当初は1年契約ながらも、月30万円の収入を得られる職場で、生活の再建に向けて新たな一歩を踏み出しています。

「やっと息子の笑顔が戻ってきた気がします」と洋子さんは安堵の表情を見せました。小さな一歩ですが、家族それぞれの未来に、希望の光が差し始めています。

※東京商工リサーチ『2025年「早期・希望退職」「役職定年」に関するアンケート調査』
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201568_1527.html

三原 由紀
プレ定年専門FP®

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