「自分の家なのに落ち着かない…」結婚前提の同棲半年で、36歳女が別れを決断した、彼のルールとは?

「自分の家なのに落ち着かない…」結婚前提の同棲半年で、36歳女が別れを決断した、彼のルールとは?

今週のテーマは「結婚願望強めな36歳女が、半年の同棲期間を経て急に別れを切り出してきた理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:「結婚前の同棲はNG?」結婚願望強めな36歳女が、半年で自ら別れを切り出したワケとは?


私が龍太に「別れてほしい」と告げたのは、日曜日の夜だった。

彼はソファに座って、テレビを見ていた。私がリビングに入っていくと、龍太は当たり前のように音量を下げた。そのさりげない気遣いが、余計に胸に刺さる。

「龍太。今いい?ちょっと話があるんだけど」

振り返った彼の顔は、まだ何も知らない顔だ。

でも、私は勇気を振り絞って、この半年間ずっと考えていたことを伝えた。

「この同棲を、解消したい。そして、別れたいの」

交際して約1年で、そのうち同棲期間は半年。

結婚を前提にしたこの同棲が決まった時、私は36歳だった。結婚を焦っていた私からすると、願ってもみない最高のプレゼントだった。

でも、ほぼ確定していた結婚の約束を蹴ってまで、私が関係を解消することを申し出たのには、理由があった。

A1:「ちゃんと考えている」その言葉が、決め手だった


龍太と出会ったのは、共通の友人の食事会だった。36歳になって、そろそろ結婚を真剣に考えなければ…いや、「そろそろ結婚しないとやばい」と思い始めていた頃のことだ。

35歳でメガバンク勤務の龍太は、収入も安定していた。「いい人だよ」と紹介してくれた友人の言葉通り、清潔感があって会話も知的だった。

「また会いたいな」

食事会の帰り、龍太の方からLINEが来た。次のデート、その次のデートと重ねるうちに自然と付き合っていた。龍太からのアプローチは、いつも丁寧だった。

そして交際して半年が経った頃、龍太から同棲の提案をしてきた。

「そろそろ一緒に住まない?ちゃんと考えているから。プロポーズも、もちろんその先のことも」

36歳の私には、除夜の鐘以上にガンガンと鳴り響く言葉であり、何より渇望していた言葉でもあった。

私に、同棲を断る理由はなかった。


とんとん拍子に進んでいく引っ越しの話。

ただし、最初から少し引っかかることは幾つかあった。まず、物件を探しについてだ。

「奈緒、エリアなんだけど勝どきでもいい?僕らの予算を考えると、その辺りか有明しかなくて」

彼の勤務地は大手町で、私は六本木。たしかに大江戸線を使えば一本かもしれないけれど、勝どきエリアには縁もゆかりもない。

「そうなの?どういう条件で探しているの?」
「二人で住むなら、最低60平米は欲しいでしょ?そして2LDKは死守したいよね…」
「そっか」

そう返事をしながらも、私の中では若干のモヤっと感があった。

― もう少し、先に相談してくれても良いのに…。

でも、家賃を多めに支払ってくれるという龍太に対して、私の意見を言う余地はほぼない。

また引っ越す前に、龍太はすでに“家具の候補リスト”を作ってきた。

アパレル勤務の私は、インテリアにはこだわりもあったけれど、エクセルにびっしり書かれたリストを前に、なんとなく言い出せない雰囲気を感じる。

「龍太、すごいね…。全部任せっきりにしちゃってごめんね」
「ううん。一緒に住むなら、ちゃんとした部屋にしたいし。二人で住む家だから、こだわりたいじゃん?でも、奈緒の意見を聞くから何かあったら言ってね」
「そうだね。ありがとう」

彼はそう言ったものの、実際はほとんど決まっていた。


そして同棲開始と同時に、厳密なルールも設定された。

掃除はほぼ毎日すること。ただし時間を要する本格的な掃除は、週末の午前中にする。食器は食後すぐに洗う、洗面台は使ったら拭いて、洗濯は週に2~3回…。

正直、これを言われた時に私が咄嗟に思ったのは「面倒くさい」だった。

でも一緒に暮らしていく上では、必要なことだと思うから文句は言わなかった。

それに、最初は幸せだった。新居に二人の荷物が混ざり合って、初めて作った朝食の匂いが部屋に広がり、日曜はコーヒーの香りで目が覚める…。

― このまま結婚かぁ。

そう信じていた私にとって、少なくとも最初の2ヶ月は良かった。

A2:正しすぎる暮らしに、自分の居場所がなかった。


まず、龍太はとにかく細かい性格だった。

例えば、二人で楽しく家で食事をしていた時のこと。食べ終わってからしばらくテレビを見ていると、龍太が急に諭してきた。

「奈緒、食器は早めに洗おうね」
「え〜でもまだ残りのビールを飲んでいるし。後でやるよ」

私はまだ、ビールを飲んでいる。この後、食器を下げないわけではない。これはただ、私のタイミングだ。

それなのに、いちいちうるさい龍太。

「うん。でも食器だけ、先に洗おうか」
「わかった」

そう言いながらも、「私のタイミングがあるのに…」と思っていた。


変化は、少しずつだった。

同棲を始めて3ヶ月が経った頃、洗面所で並んで歯を磨いていると、龍太が急に洗面台の縁に目を落とし、何も言わずにティッシュで何かを拭き取った。

ふと見ると洗面台に、私の髪の毛が1本落ちていた。

「うわ…ごめん!」
「いいよ、僕がやるから」

その言葉が優しさなのか苦言なのか、わからない。でも龍太の表情は、明らかに少し曇っている。

それからというもの、私は洗面所を使うたびに少しだけ緊張するようになった。鏡を見ながら、「髪の毛、落ちてないかな」と確認する。そんな毎日が始まった。

自分の家のはずなのに息がつまる。常に“汚れないかな”とか気を使わないといけないし、落ち着かない。

洗濯もそうだった。

龍太は洗濯を、週に2~3回と決めている。私がそれ以外の日に洗濯しようとすると、必ず声がかかる。

「奈緒、まとめて回した方が効率良くない?」
「明日、この洋服着たいから」
「でも量が少ないと、水も電気ももったいないよ」

正論だし、彼に悪気はないのはわかっている。

でも、なんだか苦しい。自分の家なのに、自分のペースで洗濯できないことにも、少しずつ疲れていく。

そして決定的だったのが、日曜日の朝の出来事だった。


「もう起きるの?早いね」

朝、起きてゴソゴソとランニングの準備をしている龍太。

「ごめんね、起こしちゃった?奈緒は、まだ寝る?」
「うん、日曜だし。もう少し寝てようかな。気をつけて行ってきてね」
「わかった。僕はランニングに行ってくるね」

命令ではないし、言い方も優しい。早起きを強要をされているわけでもない。でも、ずっと息苦しい。

― この人と結婚したら、一生こうなんだろうな。

そう悟った瞬間、私の中で何かが静かに終わった。



共同生活に次第に耐えられなくなった私は、結婚前提の同棲だったけれど、“別れ”を選ぶことにした。

彼が悪い人だとは思っていない。むしろ、真面目で誠実で、将来設計もしっかりしている。

そして彼が言っていることに関しては、すべて正論だ。週末でも朝早く起きた方がいいし、部屋も常に綺麗な方がいいに決まっている。

でも、一緒に暮らしてわかったことがある。

私には、ダラダラできる週末の朝が必要だ。髪の毛1本を気にしないで済む洗面所が、必要だ。自分のペースで洗濯できて、多少のことは目を瞑る…そんな当たり前が、必要だった。

結婚は、赤の他人が結びつくのだからお互い譲歩が必要だ。

だからこそ、一方的に息が詰まる関係は続かない。

私と龍太では、生活基準が違う。言葉にはしないものの、このまま一緒にいたらいつか彼が苛立ちをぶつけてくることも見えてしまう。

そう悟ったので、私は別れを告げた。


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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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配信元: 東京カレンダー

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