開放的な空気に包まれるこの季節。
艶やかに活気づく夜の街に呼応するように、レストランシーンにも瞬く間に東京の夜を席巻するであろう店が続々誕生している。
グルメな大人なら知っておくべき、新しき名店を紹介。
2026/4/9 OPEN
裏路地に忽然と現れるアトリエで、新しき食体験への扉が開かれる
ガストロノミーレストランを開く場所としては、意外性のある街「蒲田」。
駅前の喧騒とは趣を異にする一角に、クールなコンクリートの外壁と豊かな緑とが共存した建物が出現した。
アフリカンチェリーの一枚板を使ったカウンターを、空間に対して斜めに配したインテリアはなんともユニーク。三角形の調理台を囲んで和やかに立ち働くオリヴィエさんと菜都子さんの姿も、なんとも美しい
一歩、中に足を踏み入れればそこは別世界。シェフのオリヴィエ・ガルシアさんと、パートナーでこの店のディレクターを務める髙遠菜都子さんが、温かく出迎えてくれる。
ここ『MAISON OLINA』は、かつてふたりが東麻布の住宅街で営んでいた『OLINA』をアップデートさせた隠れ家レストランなのだ。
“旅のはじまり”をイメージした「きゅうり/メロン/いんげん」は、驚きに満ちた3種類のフィンガーフード
季節感に満ちたコースは、生産者との交流を重ねて吟味した食材を、オリヴィエさんのインスピレーションと菜都子さんの美意識により、洗練された料理へと昇華させた9品で構成。
なんとも愛らしい「なす/甘エビ/ガランガル」。なす型のチュイルの下には乳酸発酵したなすや甘エビのタルタルが
なすを象ったチュイルを使うなどエスプリに富んだ皿もあり、一品ごとに心が沸き立ち、満ち足りる。
香りも味も濃密な「鮑/枝豆/エルダーフラワー」。すべてコース(¥17,000)より
なじみのエリアから、感性が磨かれる時間を求め、しばしエスケープを。
2.未知なる“焚音料理”で驚かせるイタリアンに、フーディーがざわめいている
『熾 OKI』@広尾
2026/5/4 OPEN
火元と客席の距離が確保できるよう、十分に奥行きを取ったカウンターは広々としていて居心地が良い。店内奥には、ボックスタイプのテーブル席もあり、さまざまなシーンで利用できる
炭火を自在に操る新鋭が、西麻布の一角で腕を振るう
「焚音料理」という、聞き慣れないキーワードを掲げてオープンした『熾 OKI』。
同じ西麻布にある『OGGI』や元麻布『TOSAGE』を手掛ける「オールイタリアンクラブ」による最新店だ。
カウンター中央に設えられた焼き台で、火の大きさと食材の高さとを調節しながら、ジャストな火入れに仕上げる徳永さん
着火したのち、炎は上がらずに炭本体が真っ赤に燃えている状態=熾火は、安定した高温の遠赤外線効果で食材の水分をキープしたまま焼き上げることができる熱源。
この熾火と、炎が上がる炭火とを、シェフの徳永翔平さんが巧みに使い分けて料理を仕上げていく様子はライブ感抜群。
さらに枯れ葉や乾燥させた食材の端材、藁などを燃やして香りを纏わせるテクニックも駆使。視覚・聴覚・嗅覚に訴えかけてくる。
「本日の鮮魚」¥3,300~(魚種で変動)。写真は、長崎で揚がったキジハタ。熾火の効果でふっくら。完熟赤ピーマンのソースや焼き野菜と
メニューは、食べ慣れた大人向けのアラカルトが中心。
「青森 アオリイカ イカ墨」(¥3,300)は、イカ墨のラグーで作ったリゾットに、炭火で焼いたイカや自家製の生カラスミを
白木のボックスに美しく並べられた、その日オススメの食材を見ながらオーダーを組み立てる時間も楽しく、もちろん、味覚もしっかりと満たされる。
3.華麗なる皿の連続に心躍る、女性が喜ぶチャイニーズがある
『Li Hua(リーホァ)』@恵比寿
2026/4/28 OPEN
店名にふさわしく、ショープレートに花が飾られたテーブルセットもゴージャス
感性を刺激する、美しきヌーベルシノワの世界に引き込まれる
恵比寿駅西口から程近い高台にそびえ立つ「タイムゾーンテラス」は、この街きっての“美食ビル”のひとつ。
その中にまた1軒、訪れたくなるニューフェイスが誕生した。
個室は4席×3室、2席×1室の計4室が。すべて内装のテイストを変えている
その名も『Li Hua』は、新宿御苑、外苑前、乃木坂などに店舗を構える『礼華』グループによる最新店。
こちらでは、上海料理をベースに日本ならではの季節感や、時には西洋のテクニックも取り入れた艷やかなヌーベルシノワがコンセプトだ。
広東省で主に食べられている「ローヘイ~中華カルパッチョ~」は、真鯛の刺身にカラフルな薬味を盛り、醤油ベースのタレをかけて
他では出合えない品々で紡がれるコースのトップバッターを飾るのは“中華風カルパッチョ”こと「ローヘイ」。
綺麗に盛られた真鯛の刺身に、自分で色とりどりの薬味とタレをかけ、和えて完成させるスタイルはなんとも新鮮。
エディブルフラワーが華やか!独創性溢れる「Li Hua式北京ダック」
また、おなじみの北京ダックも、黄色い塩卵やブルーベリーソース入りのタレと味わう新趣向で、見た目も華やかだ。
「美明豚燻し叉焼」は、脂の甘い銘柄豚を使用。蓋を開けると、薫香が広がる。すべてコース「櫻華」(¥9,900)の一例
目も舌も楽しませてくれる品々に、心弾む時間を過ごせるはずだ。
4.元麻布ヒルズの麓に鮨と天ぷらの二刀流でもてなす、秘密の一軒がある
『元麻布 ささ野』@麻布十番
2026/4/20 OPEN
大樹をイメージしているというフォレストタワーのデザイン・設計は「世田谷美術館」なども手掛け、日本を代表する建築家である内井昭蔵氏が担当した
レジデンスの中という、想定外なロケーションに胸が高鳴る
麻布台、虎ノ門、六本木など港区に点在する“ヒルズ”の中で、唯一レジデンス棟のみで構成されているのが「元麻布ヒルズ」だ。
しかし、メインのフォレストタワーの中に、ビジターでも利用できる日本料理店が、この度オープンした。
店はレジデンスの車寄せに面しており、住民でなくても、臆せずアクセスできる。またランチタイムには、気軽に味わえる海鮮丼や天丼といったメニューも
鮨と天ぷらが、それぞれのカウンターでお出迎え。2度訪れる楽しみがある
『元麻布 ささ野』がユニークなのは、そのロケーションだけではない。本格的な鮨と天ぷら、それぞれの専用カウンターを備えているのだ。
かしこまらない接客でもてなしてくれる橋本さん
天ぷら職人として腕を振るう総料理長の橋本竜児さんは、シンガポールやマカオ、ホノルルなどの日本料理店でも活躍した実力派。
鰹だしがベースの「トマトの摺り流し」には、わさび風味の長芋とたたきオクラを添えて。
グラスの縁に塩を付けたスノースタイルで、カクテルのように供する。
1本目はウェルダン、2本目はミディアムレアに仕上げる、長崎県産の「車海老」。
身の厚い江戸前の「キス」は、ふっくらと揚げる。
料理はすべて「天ぷらコース」(¥19,712)の一例。
敷地内の庭を眺めながら寛げる天ぷらカウンター。
美しい所作でつけ場に立つ渡邉さん
そして、鮨割烹の料理長を務める渡邉ひかるさんは、麻布十番『御料理 辻』や銀座『鮨 むらやま』などでの修業経験を持つ有望株。
いずれも、一品料理と天ぷら、あるいは鮨とを融合させたコースで楽しませてくれる。
欠かせない鮨ネタといえば「赤身」。まぐろは「やま幸」から。
酢飯には3種類の酢を使っているが、赤酢は香りも色も柔らかな「琥珀酢」を使用。
「焼き茄子とごまのスープ」は、夏らしい一品。大葉オイルと花穂じそがさわやかさを添える。
江戸前鮨らしい「小肌」。やや小ぶりで、丸みのあるフォルムが渡邉さん流の握りだ。
料理はすべて「鮨割烹コース」(¥19,712)の一例。
白木を基調にしたゆとりのある鮨カウンター
知る人ぞ知る“ヒルズ”に存在する、好奇心をくすぐる密やかな一軒。覚えておけば、切り札になる。
5.隠れ家ホテルに潜むバーは、茶・酒・菓子の3要素で浮世絵の世界へと誘う
『BAR 36』@東京
2026/5/29 OPEN
6点の浮世絵の存在を際立たせるような、オフホワイトを基調にしたシンプルな空間。ソファ席や、窓際にはスタンディングエリアも
『富嶽三十六景』を五感で味わう!?“2軒目は江戸”な夜もあっていい
東京駅八重洲口から徒歩1分という抜群の立地に、アパートメントホテル「RHUMB LINE TOKYO」が開業した。
ホテル自体はツーリスト向けの仕様だが、こちらの2階にオープンしたのが「浮世絵を、吞む」というユニークなコンセプトを掲げた『BAR 36』。
店名の“36”は、葛飾北斎の『富嶽三十六景』にちなむ。
カウンターに座ると、目の前には6点の浮世絵が展示されている
江戸時代、浮世絵は日本各地の気候風土を伝える媒体として親しまれていたという。
ここでは、作品に描かれた情景を「茶・酒・和菓子」の3品に落とし込んだセットメニューを味わえる。
『神奈川沖浪裏 富嶽三十六景』のカクテルは「ほうじ茶ラムコーク」
例えば『富嶽三十六景』の代表作『神奈川沖浪裏』であれば、秦野のほうじ茶とそれを使ったカクテルに鎌倉の銘菓を添える、といった具合だ。
浮世絵の理解が進むと同時に旅情が掻き立てられる。
『高梨茶園』の「ほうじ茶」。
本わらび粉を使った鎌倉『こ寿々』の「わらび餅」。3品セットで¥3,500
歌川広重の『東海道五十三次』『六十余州名所図会』を題材にしたものもあり、セットは全6種。
コンプリートを目指したくなる。


