全国の医師・歯科医師約10万6000人で構成される全国保険医団体連合会(保団連)は10月16日、福岡資麿厚労相に対し「老朽化した入院医療機関の改築費用にかかる補助金を求める要望書」を提出した。
病院4軒に1軒が“築40年超”「早急に改善するための補助金」要求
要望書では5月26日に報道されたNHKの調査をもとに「法定耐用年数を超える築40年以上の病棟を持つ病院は全国で1623、全体の27%に上り、築50年以上は全国で568(9.3%)、築60年以上の病棟を持つ病院も151(2.4%)に上っている」と指摘。
「このままでは老朽化、感染防止対策、ICT導入、さらには厚生労働省として進めている地域医療構想の構築の点など、様々な機能に対応することは困難だ」として、次の3点を要求した。
- 老朽化した入院医療機関の療養環境を早急に改善するために、政府として補助金事業を設けること
- すでに借り入れで改築した医療機関に対する、借入残額を補助する事業の創設
- 建築費高騰に乗じた悪質業者への対策として適切な事業者を紹介するなど、厚生労働省や各都道府県としてより丁寧な対応を行うこと
医療機関倒産は過去最多ペース
帝国データバンクが今年7月に発表した調査結果によると、2025年上半期の医療機関の倒産は35件となり、過去最多のペースで推移しているという。
同調査では、物価高や人件費などの高騰による収益悪化や、経営者の高齢化などの問題から、経営状態が悪化している医療機関は増加し続けており、「このままのペースで推移すると、2025年の倒産件数は、はじめて70件に達する可能性がある」と指摘。
病院の老朽化についても「病院建物の法定耐用年数は39年とされているが、同年数を超えても、建設費高騰や資金難で新施設の建設ができずに事業存続危機に陥る施設が相次ぐのではないか」として、倒産増の要因になり得るとの見方を示している。
「診療報酬の期中改定、公的支援の抜本的強化が求められる」
保団連は9月9日の厚労相記者会見でも、今回の要望書と同様に、物価や建築コストの上昇を受けて、老朽化した病院施設の建て替えが困難になっている現状を示し、病院経営の危機打開に向けた国の対策を質問していた。
これに対し、福岡厚労相は、医療機関の建て替え等について「地域医療介護総合確保基金を通じて医療機関の施設整備等を支援するとともに、足下の資材高騰を踏まえて、令和6年度補正予算による緊急的な支援を行っている」と説明。
また、物価高騰に苦しむ医療機関への支援として「重点支援地方交付金の積み増しや福祉医療機構の融資の大幅な拡充」などで対応していると述べ、次のように続けた。
「今後、骨太の方針2025も踏まえて、今講じている施策の効果を把握しながら、次の診療報酬改定をはじめ必要な対応を検討してまいりたいと考えています。
なお、(建築費高騰に乗じた悪質業者など)建築現場の不正なことへの対応等については、建設業者への指導監督は建設業の許可を行う許可行政庁において対応されているものと承知しています」(福岡厚労相)
こうした厚労相・政府の説明に対し、保団連側はHP上で「国の対策は後追いで極めて不十分な対応と言わざるを得ない」と指摘。「医療機関の経営危機を救うには診療報酬の期中改定、公的支援の抜本的強化が求められる」と述べた。

