争点:庭園設備は市場価値がないから0円評価でよいか
自宅の庭園設備について、「市場での交換価値がない」ため、評価通達を適用せず評価額を0円とできるかが争点となりました。
納税者の主張:市場性がない庭園に高額評価は不当
Aさんは、この庭園設備は立地条件が悪い上、個人宅の庭という性質上、一体として市場で売却しようとしても買手が見つからず交換価値は存在しないと主張しました。
仮に売却が可能だとしても、庭石、灯篭などを個別に分解して売却せざるを得ず、その場合の買取価額は、搬出や運搬の費用を差し引けば極めて低額にしかならないとしました。
さらに、個人宅の敷地内にある庭園設備は入場料を取れるようなものではなく、そのような経済的な使用価値がない財産に対して高額な評価を課すのは不当であるとし、評価通達の定める画一的な方法で評価をすることが著しく不適当と認められる「特別の事情」に該当すると主張しました。
税務署の主張:金銭に換算可能な価値がある以上評価対象
税務署は、相続税法上の「財産」は金銭に見積もりが可能な経済的価値のある全てのものを指すことを確認したうえで、この庭園設備は複数の専門業者によって金銭的な価値が認められていることなどから相続税の課税対象となる経済的価値を有することは明白であると反論しました。
評価通達の適用を適用しないための「特別の事情」は存在せず、通達に基づく評価が適正であるとしました。
国税不服審判所の判断:評価通達に基づく評価が妥当
国税不服審判所は、税務署の主張を支持しました。
この庭園設備は多額の費用を要して移転・造園されたものであり、複数の業者がその価値を評価していることから、「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」、すなわち評価通達に定める「庭園設備」に該当するものであり、Aさんの主張する「売却できない=交換価値ゼロ」という主張については採用できないとしました。
さらに、相続税評価において、評価通達の定める評価方法は、課税実務の公平性と効率性を担保するために設けられたものであり、その方法が合理的である限り、評価通達以外の評価方法を適用することは、原則として認められないとして、税務署の更正処分は適法であると判断しました。
