いつまでも輝く女性に ranune
アジア太平洋地域における金保有量の増加とその構造的背景

アジア太平洋地域における金保有量の増加とその構造的背景

金を裏付けとするETFの普及拡大

APAC地域は、2003年にオーストラリアが世界初の金ETFを立ち上げたことで金ETFの先駆者となり※4、着実に成長する市場の基礎を築きました。2025年6月時点で、当地域の保有量は過去最高の368トンに達し、世界の金ETF保有量の10.2%を占めるまでになりました※5。初期の成長ペースは緩やかで、100トンに達するのに14年かかりましたが※6、2020年以降は中国などの国々も含め、普及が大幅に加速しました。

こうした急増の背景には、経済的不確実性の高まり、持続的なインフレ、現地通貨安、ポートフォリオにおける金の分散効果に関する認知度向上など、マクロ経済面と構造面の複合的な要因がありました。APAC地域における機関投資家と個人投資家はいずれも、金へのエクスポージャーを得るため流動性が高く、透明性があり、コスト効率の高い手段として、金ETFをますます活用するようになっています。

今後の見通しは引き続き堅調です。金価格の持続的な上昇傾向と、税制優遇策や政策改革などの規制面の枠組みの進展によって、非伝統的セクターを含む現地需要は一段と促進されるとみられます。世界の金投資環境におけるAPAC地域の影響力が拡大するにつれて、金ETFは地域の投資戦略において一段と重要な役割を果たすようになるとみられます。

出所:ワールドゴールドカウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年6月30日時点 [図表3]APAC地域籍の金ETFの運用資産 出所:ワールドゴールドカウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
2025年6月30日時点 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年6月30日時点 日本株式:TOPIXトータル・リターン指数、インド株式:NSEニフティ・トータル・リターン指数、豪州株式:ASX200トータル・リターン指数、中国株式:CSI300トータル・リターン指数、タイ株式:タイSETトータル・リターン指数、タイバーツ:タイバーツ/米ドル、インドルピー/米ドル、中国人民元:人民元/米ドル、豪ドル:豪ドル/米ドル、日本円:円/米ドル 過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。 [図表4]金価格、主要株価指数と通貨の年平均成長率 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
2025年6月30日時点
日本株式:TOPIXトータル・リターン指数、インド株式:NSEニフティ・トータル・リターン指数、豪州株式:ASX200トータル・リターン指数、中国株式:CSI300トータル・リターン指数、タイ株式:タイSETトータル・リターン指数、タイバーツ:タイバーツ/米ドル、インドルピー/米ドル、中国人民元:人民元/米ドル、豪ドル:豪ドル/米ドル、日本円:円/米ドル
過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

金投資商品の普及拡大

APAC地域では金ETFの人気上昇に加えて、他の金投資商品も一部の市場、特に日本やタイで注目を集めるようになっています。

日本では、2020年から2024年までの経済環境が金の需要動向を形成する上で重要な役割を果たしました。持続的な円安、2022年以降の国内インフレ率の加速、前例のない地政学的リスクを背景に、家計はこれらのリスクをヘッジできる伝統的な資産に逃避先を求めました。

金の小売価格はこの期間に急騰し、過去最高値を幾度となく更新しました。2024年初頭までに、円建て金価格は1グラムあたり10,000円超えの史上最高値に達しました。これにより、金への関心がさらに喚起されたと考えられます。

この期間に個人投資家の間で金投資信託と金ETFの人気が高まったのは確かです。これは、これらの投資商品が現物金の保有に比べて、アクセスが簡単で、さほど面倒でない投資手段を提供するという世界的な傾向を反映しています。

金投資信託と金ETFへの純資金流入額は、2020年~2023年の年平均4億7,860万米ドルから、2024年には18億9,810万米ドルに急増しました※7。この堅調な増加傾向は2025年に入っても続き、純流入額は上半期だけでも29億7,290万米ドルに達しました。これは2024年通年の約1.6倍に相当する金額です※8。絶対量ベースでも、これらの投資商品に関連する金需要は2020年~2023年の年平均7.8トンから、2024年には22.4トンに急増し、さらに2025年には上半期だけで22.7トンに達しました※9。

2025年上半期には、新規資金流入額の約83%が金投資信託に向けられ、2024年の約78%から上昇しました。一方、残りの17%は金ETFに流れ、2024年の約22%から低下しました※10。

日本では、幾つかの構造的・文化的要因から、ETFよりも投資信託の方が引き続き選好されています。長年にわたる存在感と高い知名度が人気の背景となっています。加えて、メガバンクや有名金融機関を通じて広範にアクセスできることも、投資信託の人気を支えています。ただし、若年層やより高度な知識を持つ投資家の間では、コスト効率の良さと取引のしやすさから、ETFに投資する傾向が強まっています。

出所:ワールドゴールドカウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データ期間:2020年1月1日~2025年6月30日 過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。 [図表5]日本の民間部門による金需要 出所:ワールドゴールドカウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
データ期間:2020年1月1日~2025年6月30日
過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

タイでは、タイ証券取引所に上場する有価証券で、(金ETFを含む)外国上場ETFへの完全投資が可能な預託証券(DR)が導入され、国内投資家の間で人気が高まっています。2024年に導入された複数のDRは世界最大の金ETFへのアクセスを提供しており※11、タイの個人投資家は、規制された手軽な投資手段を通じて金への直接的なエクスポージャーを得ることが可能になっています。

 

あなたにおすすめ