いつまでも輝く女性に ranune
〈smbetsmb〉アートディレクター・新保美沙子さんが「しつらえ」の美意識を学んだ、5本の映画。

〈smbetsmb〉アートディレクター・新保美沙子さんが「しつらえ」の美意識を学んだ、5本の映画。

必要十分な暮らしを支える、選び抜かれた道具。

家の中に洗面台はない。髭を剃る際に鏡の位置を移動し、即席の作業場を自ら作った。

時代は1970年代。自然豊かな土地に暮らす老夫婦の営みは、手仕事が中心でとてもプリミティブ。薪で火をおこし、井戸から水を汲み、薪ストーブの熱を使って調理をする。生活の動線も至ってシンプルで、コンパクトな平屋の居間には、あるべきものがあるべき場所に収まっています。繰り返す日常の中でユニークだったのが、ジュールの髭剃りのシーン。彼は壁に掛けた鉄製フレームの鏡を、外光が入る玄関の扉に掛け直します。そして、近くにあった椅子に洗面器を置き、明るい光を受けながら髭を剃る。家にある必要最低限の道具と自然環境を、状況に合わせて活用する。暮らしの知恵が生んだしつらえだと思います。

従兄ジュール監督 ドミニク・ブニシュティ

フランス・ブルゴーニュ地方の田園地帯にポツンと佇む平屋の一軒家に暮らす、鍛冶職人の老人ジュールと老女。自分たちなりの知恵と工夫を盛り込み、淡々と仕事や生活を繰り返す日常をドキュメンタリー的に追いかけた作品。自然とともにある生活の幸福感が滲んでいる。Cousin Jules / 1972 / France / 91min.

シンプルな仕事場と、緑溢れる庭が共存。

モダンな仕事場の窓から見える、自然豊かな庭。そのどちらも手入れが行き届いている。

「グッド・デザインの10の原則」で、世界中のデザイナーにインスピレーションを与えるディーター・ラムス。タイムレスなデザインを手がける人物として有名ですが、本作で彼の人間的な生活や細部にまで目を配った住まいを見て、はじめてその奥行きを感じられた気がします。日本文化に影響を受けたラムス邸の庭は、まるで日本庭園のよう。光や風の通り道を作るため植栽の手入れはこまめに行い、盆栽は自らで剪定します。手を入れることで環境と調和を生み出す庭と、ミニマルな仕事場。一見対照的ですが、どちらも「丁寧に整える」という姿勢が貫かれており、その一貫性に彼のアイデンティティが表れています。

ラムス監督 ゲイリー・ハストウィット

ドイツ人インダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスのドキュメンタリー作品。家電製品メーカーであるブラウン社と密接に関わり、日常生活の質を高めるプロダクトをデザインしたカリスマの仕事の哲学、日常の暮らしを丁寧にじっくりと追いかけた。Rams / 2018 / USA / 74min.

配信元: & Premium.jp

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