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10月頭、パリコレことパリ・コレクションにモデルとして出演した筆者(麻衣阿)。パリコレと聞くと一見華やかな印象があるが、今回は筆者がじかに目にしたパリコレ事情を包み隠さずお話ししたい。パリから日本に帰国するまで、旅はまさにハプニング続きだった……!
◆「お前の衣装をよこせ」モデル同士の攻防戦

「ブランドから割り当てられた衣装は、肌身離さず持っていること。たとえ『デザイナーからチェンジするように言われた』と他のモデルが言ってきたとしても、その場で衣装を渡してはダメ。必ず主催側と事実関係を確認してください。中には『私の方が似合うから(着こなせるから)お前の衣装をよこせ』と言ってくるモデルもいます」
「いやそんなまさか」と思うような話だが、実際に衣装ごとランウェイの出演を盗られてしまうなんていうことは多々あるそうで、今回も衣装を盗られた日本人モデルがいた。

◆待ち時間は、まるで“市場に売れ残ったお野菜”の気分

ちなみに筆者はブランドの専属モデルとして呼ばれたわけではない。
筆者のようにフリーで参加するモデルは、椅子に座り、デザイナーやスタッフから声が掛かるのをひたすら待ち続ける。しかし筆者は35歳(出演時)、身長158cm(年々縮む)。
こんな低身長でアジア顔のモデルに振ってもらえる、西洋の衣装が果たしてどれほどあるのだろうか。そう内心震えながら待ち続けた。
もちろん真っ先に声が掛かるのは海外のモデルや、いかにもモデルなスタイルの人ばかり……。皆が続々とフィッティングに入るなか、自分よりもだいぶ高齢で低身長のモデルとふたりで取り残され、自信を失っていった。
「ここ(パリ)まで来て、まさかの衣装なし……?」
笑顔を見せる余裕なんてもはや無い。不安に駆られながら待ち続ける時間は、市場で売れ残ったお野菜の心地がした。

