◆休養期間に過ごしたマレーシアは「心の病院」

河本:そうですね。うつ病の中にも色々と種類がありますが、僕自身は「不安障害」「強迫性障害」の傾向が強かった。公園にいっても、人目が気になって仕方がなくなってしまったんです。
そんなとき、昔やっていた番組の中で「アジア住みます芸人」という企画があり、マレーシアに移住した後輩のことを思い出し、11年ぶりに連絡を取ったのを機に向こうに行くことになりました。日本からマレーシアまでは、飛行機で約6時間半ほど。医師に相談して帯同者はつけましたが、眠剤を飲んで起きたら到着していて、心配するほどではなかったです。
マレーシアの人口は約3350万人で、田舎に行けば海も山も川もある。多民族国家で、露骨なアジア人差別もない。治安が良く、人も親切で、まるで竜宮城のようなところでした。
ーー滞在中の時間は、どのように過ごされていたのでしょう。
河本:オンとオフを分け、バランス良く過ごすことを心がけました。例えば日本だと仕事がある前々日あたりからドキドキが始まるのですが、「今は仕事がない」と言い聞かせてなくしたり。マレーシアの人たちは僕のことは誰も知らないので、2週間滞在したら心がすごく楽になりましたね。
マレーシアは「心の病院」だと思い、今も通い続けています。ただ現実、先月の吉本の給料は月2000円で、食い扶持のことも考えていかなくてはいけません。今後はマレーシアと二拠点で仕事ができるような体制を作ろうと思い、準備を進めているところです。
◆自分に優しく、人に優しく、さらに自分にもっと優しく

河本:あまり先を決めない方がいいと思っています。目標を立てると「そうあらねばならない」という考えが出てきて、どうしてもしんどくなってしまうからです。
強いて言うならば、うつ病の講演はやりたいですね。病気になってから考えたことや、パニック障害の症状が起こった時の対処法など、お伝えしたいと思っています。

河本:自分に優しく、人に優しく。さらに自分にもっと優しく。これを心がけてほしいですね。恥ずかしいかもしれませんが、例えば鏡を見ながら自分に対して毎日「ありがとう」と言うだけでいい。日本人はとかく「自分を甘やかしてはいけない」と思いがちですが、それはかえってピリピリした空気を醸し出してしまうだけ。自分で自分にご褒美をあげる、という発想を大切にしてほしいと思います。
いつも後輩に囲まれ、笑いの絶えない生活を送っているイメージが強かった河本さん。それだけに、「おごるのもおごられるのも、すごくしんどかった」という言葉にハッとさせられた。いつもは笑顔で接してくれるので気づいていいないが、何気ないやり取りが責任感の強い相手を追い詰めていないかーーそんな視点でまずは日頃の言動を点検してみることが、社会全体でうつ病を防ぐ第一歩になるのではないだろうか。
<撮影/長谷川唯>
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

