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役場職員「ほかの地区とは明らかに違いますね」…人口わずか7,000人、北海道・安平町(あびらちょう)で“億を稼ぐ”資本家たちの正体【お金持ちの地方の実態】

役場職員「ほかの地区とは明らかに違いますね」…人口わずか7,000人、北海道・安平町(あびらちょう)で“億を稼ぐ”資本家たちの正体【お金持ちの地方の実態】

日本でお金持ちが多い場所と聞くと、東京や大阪、横浜や神戸など、大都市をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、日本にはあまり知られていない“お金持ちの村・町”が数多く存在します。北海道勇払郡に位置する安平町(あびらちょう)もそのひとつです。では、この村の住民はなぜお金持ちなのか、経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が、実際の住民の声を交えて解説します。

北海道・安平町に集う“億を稼ぐ”富裕層たち

北海道の勇払郡に位置する安平町。2006年に追分町と早来町が合併して誕生したこの町は、農業や酪農を基幹産業としながらも、新千歳空港から車で30分、札幌から1時間程度という交通利便性を誇る。北海道の大地の広がりと都市へのアクセスを兼ね備えた町として知られる。

そんな安平町が、2024年の市町村別平均所得ランキングで全国14位(北海道内1位)にランクインした。

平均所得は約617万円、給与換算(※)で約807万円に達し、全国有数の“高所得地帯”として注目されている(ZEIMO「2024年(令和6年)市区町村別所得(年収)ランキング」より)。

(※)給与換算とは……本記事の平均所得は、税務統計に基づく「課税所得額」である。一方、実際の給与額に近い水準に補正するため、社会保険料や給与所得控除を逆算した概算値を「給与換算額」とした。

もっとも、この数値を押し上げているのは、競走馬生産事業に従事する一部の事業者や高額納税者であることを理解しておく必要がある。

町役場職員「牧場周辺は景観整備が行き届いていて、まるで欧州の農村のような雰囲気です。町内のほかの地区とは明らかに違う世界が広がっていますね」

職員のこの言葉は、安平町に集積した「競馬資本」の存在感を端的に物語っている。

競馬関連資本が支える“無形資産”の町

安平町の所得事情を語るうえで欠かせないのが、社台スタリオンステーションやノーザンファームといった、競走馬関連企業の存在だ。これらの拠点には億単位を稼ぐ競走馬生産者や関連法人が集まり、町全体の平均所得を大きく引き上げている。

その強さの根底には、「血統ブランド」と「育成ノウハウ」という無形資産がある。

ディープインパクトやドウデュース、アーモンドアイといった名馬の血統は、血統書や認証制度によって真正性が担保され、ブランドとして市場価値を持つ。また、繁殖や調教の高度な技術は営業秘密として秘匿され、参入障壁を築いている。

これらは特許や育種権といった法的な知的財産権ではないものの、知財的に機能する「無形資産」として産業全体の収益を支えているのだ。

安平町にあるもう一つの「資産」

安平町が「高所得の町」となるうえで欠かせなかったもう一つの資産が「立地」だ。

安平町は新千歳空港の至近距離かつ、JR石勝線・室蘭本線双方の沿線に位置する。この利便性が、人・馬・物資の移動を容易にし、競馬ビジネスの効率を高めているといえるだろう。

ここまで説明した複数の条件が上手く作用することで、安平町を“競馬の町”として押し上げてきたのである。

「競馬関係者が町に来ると、普段は出ないような高級ワインやシャンパンがオーダーされます。静かな店が一気に華やぎ、経済の風を感じる瞬間です」

この地元飲食店主の話は、経済波及の一端を示しているといえるだろう。

競馬資本は、直接的な税収だけでなく、地域内消費を通じても町に潤いを与えている。

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