
花の魅力を届ける人・吉原友美さんが伝えたい“花”は、植物を通じて、今の自分の心と向き合う「今日花(こんにちばな)」というあり方。
花を選び、飾ることは、自分と向き合い、今の気持ちを感じ取る行為。季節を通して今日の自分にまっすぐに向き合う手段としての花が「今日花(こんにちばな)」なのだそう。
そんな吉原さんの日常と花のある暮らしを、吉原さんの言葉でお届けします。
写真/吉原友美

「優美」「感謝」「気品」の一方で、「移り気」「裏切り」「不安定」といった花言葉を持つダリア。

「優美」「感謝」「気品」の一方で、「移り気」「裏切り」「不安定」といった花言葉を持つダリア。
花がくれる楽しみのひとつに「花言葉」があります。
私はあまり気にしないのですが、お祝いのブーケを束ねるときには、どんな花言葉を持つのか調べることもあります。
もともとは、言葉ではストレートに伝えにくい気持ちを花に託して贈る、という目的から生まれたそうで、17世紀のトルコにまで遡るとか。
調べていておもしろいな、と思うのが、 いい意味と悪い意味両方の花言葉を持つ花があること。
たとえば「ダリア」。
「優美」「感謝」「気品」「移り気」「裏切り」「不安定」……。
華やかなダリアらしい花言葉の一方で、お祝い時には躊躇してしまうような言葉も。
10月はキク科であるダリアを手に取ることが多いのですが、自分の心境とダリアの花言葉が重なりました。
いいことと悪いことが交互に起こっては、「なぜこうなった?」「なにが悪かった?」
「どうしたらよくなる?」と心のゆらぎが多いここ1ヶ月だったのです。
「反省して、次の行動に起こせばいいんじゃない?」とポジティブな心と、「どうして、私ってこうなんだろう」とネガティブな心が振り子のようにいったりきたり。
ダリアの花言葉のように、いい面もあれば悪い面もある。
いいときもあれば悪いときもある。
そもそも、ゆらぐことは悪いことじゃない。
私の提案する、「今日花」は、日々の自分と向き合い、そのときどきの気持ちを感じ取りながら花を選んでは活ける。そこから、小さな喜びや気づきがあって、明日へのエネルギーをもらう、というもの。
大げさかもしれませんが、ダリアの花言葉からもらった小さな気づき。
私自身が「今日花」がくれる力を実感する10月でした。
花は全部が「主役」なんです

ダリアの活け方
ときどきレッスンで「どの花を主役にしたらいいですか?」と聞かれることがあります。私の場合、「全部が主役です」とお伝えしています。大ぶりな花も、可憐な小さな花も、花じゃなくて葉っぱも、全部が主役。
「還暦祝いのアレンジを」というオーダーをいただいたときも、ダリアとバラ、存在感のあるお花をあえて組み合わせました。下の方に活けた山葡萄やアストランチアも、主役です。
ポイントは、「自然のなかで咲いている姿のように」。茂みをイメージして、中心が赤く色づいたダリアと真っ赤なバラをぎゅっと密集させた、美しさと生命力を感じるアレンジです。
編集・文/柳澤智子(柳に風)

