精神科医であり、一般社団法人認知行動療法研修開発センターで理事長を務める大野裕氏は、不安とは「危険が迫っている可能性があることを知らせるこころのアラーム」であり、不安な気持ちになった時は、自分自身の気持ちに寄り添って「正しく恐れる」ことが必要だと指摘する。
(本記事は『マンガ ネコでもできる! 認知行動療法 ニャンだかツラい…がニャンだかタノシい?! に変わる本』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、再編集したものです)
◆不安なときほど立ち止まって、こころのなかを振り返ろう

もちろん本当に危険なときには、自分の身を守る必要があります。その一方で、不安を強く感じすぎているときには、軌道修正をする必要があります。不安を強く感じすぎているときには、危険性を実際以上に大きく判断したり、自分の力やまわりからの手助けを小さく考えすぎていたりする可能性があります。そうすると、不安が強くなりすぎて、必要がないのに逃げ出そうとしてしまったりします。
不安でつらくなったときには、ちょっと立ち止まって、こころのなかを振り返ってみてください。そして、自分がきちんと危険を評価しているかどうかを確認してください。危険を過小評価するということではなく、かといって過大評価して恐れすぎることもない。的確に判断をすることが、こうしたときは必要になってきます。
そのときに、緊張しすぎると力が入ってうまくこころの力を発揮できなくなります。リラックスするようにしてください。こころを落ち着けていまに目を向け、自分にやさしく、そしてまわりの人にも気配りをするマインドフルネスのこころの状態が役に立ちます。
◆「可能性」と「確率」を区別できているか?
次に、的確に判断するためのポイントをお伝えします。まず、正確な情報を集めましょう。危険かもしれないと感じると、自分の身を守るために危険を示唆する情報に目を向けてしまいます。大丈夫かな、危なくないかな、そういう目で見ていると、危ないほうに目が向いてしまいます。そうすると、危険が現実以上に大きく見えてしまう可能性が高くなります。このようなときは、いい情報、よくない情報をバランスよく適切にとり入れるようにしてください。
次に大事になるのが、ポイントの2つめ、可能性と確率の区別です。これはリスク管理でも大事だと言われていることです。どんなことでも、この世のなか、完全に安全ということはありません。いつなにが起こるかわかりません。
だからと言って、その可能性があったとしても、確率が高いか低いかはまた別問題です。可能性があるということと、確率が高いということは違います。
ここでもう1つ気をつけたいのは、心配していることが起きたときの影響の大きさです。それが起きても、たいへんなことにならず対処できるようであれば、そんなに心配しなくてもすみます。このように考えると、不安は軽くなってきます。
もちろん、このときに1人でがんばりすぎないことも大事です。わたしたち1人ひとりの力というのは限られています。お互いに助け合いながら力を発揮できれば、危険に思えたことにも適切に対処できるようになります。まわりの人の力も借りながら問題に対処していくと、自分の本来の力を十分に発揮できるようになります。

