◆「ぐるぐる思考」に陥ってしまった時にすべきこと

ですから、すぐに対応しないといけないと焦るのですが、こうしたときに焦りは禁物です。
なにが起きているか、現実にきちんと目を向け、正しい情報を集めるようにします。そのようにしているうちに、最初感じた焦りは少しずつ消えていきます。
不安に限らないのですが、感情はシャボン玉のようなものです。時間が経てば、シャボン玉がはじけるように、こころは元の状態に戻ります。そうしたこころの力を信じるようにしましょう。
それでも消えていかないときには、ぐるぐる思考になっている可能性があります。
問題の解決につながらない考えをあれこれめぐらせているぐるぐる思考の状態を専門的には「反すう」と呼びます。「下手の考え休むに似たり」の下手な人の考えのことです。
反すう状態のときには、いくら考えてもこころのエネルギーを消耗するだけで、前に進むことができません。そのことに気づいたときには、いったん考えを止めるようにしましょう。
◆自分を責める前に考えたいこと
でも、下手な考えかどうかはどのように判断すればいいのでしょうか。次に挙げる3つのポイントが判断のヒントになります。1,問題解決の方向に考えが進んでいるかどうか
2,それまでわからなかったことに新しく気づけたか
3,自分を責めることが少なくなって気もちが軽くなったか
「反すう」状態では、いくら考えても問題が解決できませんし、新しい気づきは生まれません。
考えれば考えるほど、問題が大きく見えてきます。どうすることもできないような思いになってきます。問題に上手に対処できない自分がダメな人間のように思えて、自分を責めるようにもなってきます。
自分の考えがそのようになっていることに気づいたときには、まず「これは反すうだ」と自分のこころのなかでつぶやいてください。このようにラベルづけをすることができれば、次のステップに移りやすくなります。
次のステップは、「反すう」に代わる行動をはじめることです。このときには、これまで自分の気もちがいくらかでも軽くなったような行動を選ぶようにします。
そして、その行動の結果、気もちがどのようになったかを、ありのままに自分の言葉で書き出してみてください。
最初は苦痛に感じるかもしれませんが、それを続けていれば、少しずつそれが自然にできるようになってきます。あきらめないで、辛抱強く続けていると、いつのまにか変わってきて、少しずつこころに余裕が出てきます。
【大野裕】
精神科医。1950年、愛媛県生まれ。1978年、慶応義塾大学医学部卒業と同時に、同大学の精神神経学教室に入室。その後、コーネル大学医学部、ペンシルベニア大学医学部への留学を経て、慶応義塾大学教授(保健管理センター)を務めた後、2011年6月より、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法研修開発センター理事長、ストレスマネジメントネットワーク(株)代表、長崎大学客員教授。Academic of Cognitive Therapyの設立フェローで公認スーパーバイザーであり、ベック認知行動療法国際アドバイザー、日本認知療法・認知行動療法学会理事長、日本ストレス学会理事長、日本ポジティブサイコロジー医学会理事長を歴任。

