銀行員の飯田萌香さん(仮名・24歳)が忘れられない迷惑客は、そんな時代錯誤型の客だったという。

◆カジュアルな店にお金持ちそうな夫婦が来店
「学生のころ、個人経営のイタリアンレストランでアルバイトをしていました。イタリアンといっても価格も安く、気軽に地元の方たちが日常的に訪れるようなタイプのお店でした」そんなお店でのランチ営業中のこと。男女2人でやってきた初見の客がいた。男性はぱっと見で60代後半。老人然としていたが、女性はそれよりはかなり若そうな容貌だった。ただ、親子ほどの年齢差にも見えず、年の離れた夫婦のように見えたそうだ。
「服装も品があって、お金持ちの夫婦といった雰囲気でした。いつも通り席に案内し、『メニューをお持ちします』と言って立ち去ろうとすると、男性が席の前で立ち尽くしたんです。
席を引いてほしいのだろうと思いました。高級レストランではないので普段はそんなサービスはしていないのですが、特に気には留めずに椅子を引きました。
それで男性はようやく腰を下ろしたんですが……顔を見たら、『なんでこんなこともできないんだ』とでも言いたげな感じでこちらを睨んでいました」
◆カスハラ発言を乱れ打ちする老人
少し感じが悪いお客さんだなと思いながら、飯田さんはメニューを取りに場を後にした。「テーブルに戻ってメニューを手渡そうとすると、『メニューぐらい先に用意しておけ。馬鹿かお前は』と言い捨ててから、ひったくるようにしてメニューを取られたんです。そんなことを言うお客様はそれまで一人もいなかったので、ただただ驚いてしまって……。その後、注文を取りに行くと、老人はボソボソと呂律の怪しい小声で言うので、聞き取れなかったんです。間違えるのはよくないからと聞き返すと、『二度も言わせるな!』と怒鳴られました」
老人の横柄な態度はそれだけでは終わらなかった。
「料理を持っていけば『話の邪魔をするな!』と言われ、ワインを注ぎにいけば『この下手くそが。ワインが不味くなるから貸せ』と言われたあげく、突き飛ばされました」
いずれも飯田さんにミスがあったわけではなく、そのお店でのごく通常の振る舞いだった。現に、対応を咎められたことは過去一度とてない。
にもかかわらず、接客のたびに罵倒されるので、飯田さんはその席に行くのが怖くなってしまったという。

