納得できない修正申告には応じてはいけない
6.調査結果の説明と修正申告・期限後申告の勧奨
調査で申告内容に誤りや申告漏れが判明した場合、税務署はその内容(誤りの内容・金額・理由など)を説明し、修正申告や期限後申告(以下「修正申告等」)の提出を勧めます。
ここで注意すべき点は、納得できない修正申告等には応じないことです。一度修正申告をしてしまうと、納税者の権利救済手続である再調査の請求や審査請求ができなくなり、「更正の請求」に限定されてしまいます。
「更正の請求」は救済の範囲が狭く、法的扱いも異なるため、慎重に判断する必要があります。
調査後に冷静に考えれば誤解があったと気づくこともあるため、無理に修正申告に応じずに更正又は決定(7.で説明)を受け、3ヵ月以内の再調査請求期間を活用するのが望ましい場合もあります。
7.更正または決定
修正申告等に応じない場合、税務署長は更正または決定の処分を行い、通知書を送付します。
処分可能期間は原則法定納期限から5年間ですが、偽りや不正行為があった場合は7年間まで遡ることができます。
8.処分理由の記載
更正・決定などの不利益処分や、納税者からの申請を拒否する場合は、通知書に処分の理由を明記する必要があります。
9.更正・決定をすべきでない場合の通知
調査の結果、申告内容に誤りがない、または申告義務がないと認められた場合には、その旨を書面で通知します。
10.新たに得られた情報に基づく再調査
修正申告や更正決定後であっても、新たな情報により非違が認められる場合には、同一期間に対して再度調査が行われることがあります。
処分に不服があるときの「権利救済手続き」
11.権利救済手続き
税務署長の処分に不服がある場合は、処分通知を受けた翌日から3ヵ月以内に次のいずれかを行えます。
(1)税務署長等への再調査の請求(※1、※2)
※1 再調査の請求を行っても、その決定に不服がある場合は、決定通知の翌日から1ヵ月以内に審査請求が可能です。
※2 再調査の請求から3ヵ月を経過しても決定がない場合には、審査請求が可能です。
(2)国税不服審判所長への審査請求(※3)
※3 審査請求から3ヵ月を経過しても裁決がない場合には、訴訟を提起することが可能です。
12.訴訟
国税不服審判所の裁決に不服がある場合は、その裁決を知った翌日から6ヵ月以内に裁判所へ訴訟を提起できます。
まとめ…税務調査は恐れるより“知って備える”が先決
税務調査は、納税者にとって負担が大きいものですが、同時に「正しく課税されるための重要なプロセス」でもあります。
調査の流れと自らの権利を理解しておくことが、冷静な対応と円満な解決への第一歩です。
*本記事は『国税調査トクチョウ班』(法令出版)のコラムをリライトしたものです。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
