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複雑な相続税申告、「税理士に丸投げ」では済まされない…相続人が避けられない“たった1つの重要な仕事”【税理士が解説】

複雑な相続税申告、「税理士に丸投げ」では済まされない…相続人が避けられない“たった1つの重要な仕事”【税理士が解説】

相続税の申告には、複雑な計算と実務が伴います。「税理士に依頼すれば、あとは大丈夫だろう」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうはいきません。税理士に依頼したとしても、相続人(納税者)には申告の正確さを左右する“重要な仕事”が存在します。今回は、吉田課長の質問に沿って、相続税額が決まる「3つのプロセス」と、相続税申告における相続人の役割について、多田雄司税理士がわかりやすく解説します。

〈登場人物〉

吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。

相続税は、「3つの段階」を経て金額が決まる

吉田課長「相続税の計算って、難しそうですね」

相続税の計算過程に疑問を持った様子の吉田課長。

その疑問を解決すべく、相続税の計算手順の全体像を確認していきましょう。まずは下記をご覧ください。

【相続税の計算手順】

■第1段階

次の順序で課税遺産総額(⑥)を算出し、それに基づいて相続税の総額(⑦)と各相続人等への配分額(⑧)を計算する。

①相続財産の確認、評価

②債務、葬式費用の確認、評価

③相続税の計算に取り込む贈与財産の確認、評価

④課税価格(①−②+③)

⑤相続税の基礎控除額

⑥課税遺産総額(④−⑤)

⑦各相続人等の全員の相続税の総額(⑥に基づいて計算)

⑧相続税の総額の各相続人等への配分額

■第2段階

各相続人等の⑨〜⑭の個別事情に応じて、税額の加算・減算を行う。

⑨一親等の血族、配偶者以外の相続人等

⇒相続税額の2割加算

⑩配偶者

⇒配偶者に対する相続税の軽減措置

⑪未成年者

⇒未成年者控除

⑫障害者

⇒障害者控除

⑬前回の相続(例:父)の相続から10年以内に今回の相続(例:⺟)がある場合

⇒相次相続控除

⑭外国に相続財産がある場合

⇒外国に支払った相続税額の控除

■第3段階

各相続人等ごとに、最終的な相続税額を計算する。

吉田課長「第1段階から第3段階まであるんですね」

はい。このうち、第1段階と第3段階は、すべての相続人等(相続人や遺言による受遺者)に共通して適用されます。一方、第2段階は該当する相続人等に限り適用される特例の計算です。

第1段階…“特例適用前”の相続税額を計算する

吉田課長「第1段階では、どんな計算をするんですか?」

主に、計算する項目は4つあります。

項目1.「課税価格」を求める

まずは、上記④の「課税価格」を求めます。

具体的には、①「相続財産の確認・評価」②「債務・葬式費用の確認・評価」③「相続税の計算に取り込む贈与財産の確認・評価」のそれぞれについて評価額を算出し、【①−②+③】の式で加減算します。この結果が④「課税価格」となります。

項目2.「課税遺産総額」を求める

課税価格がわかったら、課税価格から⑤「相続税の基礎控除額」を差し引いて、⑥「課税遺産総額」を算出します【④−⑤】

この課税価格は⑧「相続税の総額の各相続人等への配分額」を計算する際の配分基準としても使われます。

吉田課長「このあと、いよいよ相続税の総額を計算するんでしょうか?」

そのとおりです。

項目3.「相続税の総額」を求める

課税遺産総額がわかったら、⑦「各相続人等の全員の相続税の総額」を計算します。ただし、この段階ではあくまで総額を算出し、個々の相続人等の税額は計算しないのがポイントです。

吉田課長「でも相続税って、相続人それぞれが別々に納めるんですよね」

そうです。個別の税額は、次の項目で整理します。

項目4.「相続税の配分額」を求める

⑦で算出した相続税の総額を、⑧の規定に基づいて各相続人等に配分します。

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