「恩返しもできないのか」 vs. 「頼んでない」…母妹の泥沼口論
母が動けない生活が3ヵ月も続くと、妹はすっかり疲弊していました。2人分の食事の支度と、掃除や洗濯、母の介護で悪戦苦闘し、イライラが溜まっているようです。一方の母もAさんに電話で愚痴を零すことも増え、母と妹の関係は、日に日に悪化。会話も少なくなっていきます。
「いままで自由にさせてあげたのに、恩返しもできないのか。年金で生活費を出してきた分を返してくれたら、施設に入るから」
母のこのひと言に、妹は激しく反撃します「私が頼んだわけじゃない! お母さんが勝手に食事も弁当も作ってたんでしょ!」。
そして決定的な言葉が。
「こんなことなら、一人暮らしをしたほうがマシ!」
妹は荷物をまとめて本当に実家を出ていきました。すべての後始末をAさんに押し付けたまま……。
「自立」とは、経済的な問題だけではない
国立社会保障 人口問題研究所の「人口統計資料集」によると、2020年での50歳時の未婚割合は男性28.3%、女性17.8%となっています。20年前(2000年)と比べると未婚率は倍以上。Aさんの妹のような生き方は、もはや珍しいものではなくなっています。
しかし、親が子どもの生活を経済的・身体的に支え続ける関係は、今回のように、親の健康問題といった予期せぬ事態で、いとも簡単に崩壊しかねません。それは、新たな「8050問題」の入り口ともいえるでしょう。
自立した生活とは、単にお金を持っているかどうかだけの問題ではないのかもしれません。家族という近しい存在だからこそ、互いに甘えが生じやすく、その関係性が破綻してしまう前に、それぞれの生き方をみつめなおすことが重要です。
〈参考〉国立社会保障 人口問題研究所の「人口統計資料集」
https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2024.asp?fname=T06-23.ht
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表
