
◆あなたたちはなぜとち狂ってしまうのか
今回のテーマは「1セット4000円の安キャバに通う中年が暴走する理由」です。
流行り病の蔓延のせいで、なかなか銀座に出勤できなかったころ、西武池袋沿線にある1セット4,000円の激安キャバクラにこっそり在籍していました。
そのキャバクラは某牛丼チェーンが1階に入居している雑居ビルの2階にあり、店内に設置された大型モニターでは店長の趣味なのか「2013年洋楽ベストヒット」などが再生されていました。
飲み屋さんというのは、基本的には中年男性が家族やガールフレンド、同僚、町内会の皆さんには見せられないような、少し恥ずかしい姿をさらす場でもあり、そのために存在しています。それは西東京市のしょぼいキャバクラであろうと、銀座であろうと大差はありません。
とはいえ、おじさんたちの暴走っぷりで勝負するならたぶん安キャバの圧勝です。
では、さっそく解説します。
◆おじさんの奇行を間近で見られるのも安キャバの醍醐味
当時の私はというと、離婚したばかりで、住む家も定職もなく(定職を持たないのは今もあまり変わりはないのですが)、とにかくお金がなかったため、1セット4000円の激安キャバクラに週5で出勤し、日払いの日給で糊口をしのいでいました。
安キャバにはGacktの『Vanilla』を壁ドンで歌ってくれるおじさんや、毎朝6時に「大好きだよ」「大好きって言ってくれないの?」と電話してくれるおじさん、宇宙飛行士を目指して英検準2級の勉強をしている生まれた時からずっと無職実家暮らしのおじさん、ママチャリで駅まで迎えに来てくれるおじさんなど、個性的な(?)おじさんたちがいました。毎日退屈しませんでした。
Gacktの『Vanilla』を壁ドンで歌ってくれるおじさんと、毎朝6時に「大好きだよ」「大好きって言ってくれないの?」と電話してくれるおじさんは同じ人なのですが、Gacktじゃない中年に「愛してもいいかい?」と聞かれたら答えはNOだし、朝6時の電話はあるがままを言えばしんどい。
おじさんはすぐに私には飽きて、別の指名嬢に『Vanilla』を歌ったり、「大好きって言ってくれないの?」と迫ったり、ときには泣いたり喚いたりもしながら週2、3回は来店しているようでした。そして、なかなか「大好き」とは言ってもらえていないようでした。

