球場体験を商品にした横浜DeNAベイスターズ
当然ながら球団運営側が望むのは、スタジアムを満席にすることだ。
テレビ中継などで球場の状況がわかる昨今、空席が多い状況は興行全体の雰囲気や、ブランド価値が下がる可能性がある。
まずは席を埋めることを考えてから、単価を上げる、という流れが球団運営の構造となっている。
近年注目されているのが、横浜DeNAベイスターズだ。
暗黒期が長く、入場者も低迷していた2012年シーズンから親会社となったDeNAは、本業を生かしたウェブ戦略などの導入とともに、ホームスタジアムの横浜スタジアムをTOBで買い取り子会社化、球団運営の黒字化をはかった。
DeNAが打ち出したのは、スタンドを埋め尽くす観客やグラウンドで繰り広げられる迫力あるプレー――つまり、球場で野球を観戦する体験そのものを商品化する経営だった。
プレミアム席・BOX席・ペア席など、多様な層に訴えかけられるような座席・料金設計を行い、球場をクリーンにし、さまざまなイベント施策をすることでライト層を取り込みながら、大きな成果を上げてきた。
2017年にセ・リーグ3位から日本シリーズに進出するなどチーム力が上向くとともに、観客動員もうなぎのぼりになり、2019年にはライト側奥に(3564席)、2020年にはレフト側に(2812席)ウィング席を増設。
コロナ禍で低迷した時期もあったものの、2023年にはシーズンホームゲーム71試合で総入場者228万927人、1試合平均3万2126人を記録。翌年は同じく72試合で235万8312人、平均3万2754人、今年の速報値では71試合で236万411人、平均3万3245人と確実に観客を増やしている。
相手応援席を遠く離れたウィング席へ......
こうしたDeNAの企業努力はプロ運営の好例として報じられてきた。
しかし2024年、セ・リーグ3位から下剋上の日本一を果たし、今年も2位で期待されたなか読売ジャイアンツを迎えたクライマックスシリーズ(CS)で、それまで通常レフトスタンドの一部に設けられていた相手チームの応援席をウィング席に移動させたことが、SNSなどで非難の対象となってしまった。
『デイリースポーツ』(2025年10月10日付)報道では、チケット部の担当者の言葉として「我々が選手の背中を押し、チームが勝てる環境を作るため、どうしたら良いか。その中で360度、ベイスターズファンで埋めたい」という理由が挙げられている。
もうひとつ考えられるのは、このCSが興行的に盛り上がるうえ、球団のレジェンドである三浦大輔監督の勇退が伝えられていたことから、ホームゲームである以上、できる限りベイスターズファンを入れたかった、という思いもあったのではないだろうか。
こればかりは、限られた座席をいかに売るかという難しさが露呈したということだろう。
かつては気軽なレジャーだったプロ野球観戦。そのモデル自体の見直しを迫られているのかもしれない。