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貧乏を見てきたから、怖かった…〈資産8,200万円〉〈年金月24万円〉67歳元会社員が後悔する「貯めすぎた人生」

貧乏を見てきたから、怖かった…〈資産8,200万円〉〈年金月24万円〉67歳元会社員が後悔する「貯めすぎた人生」

節約が「生活のルール」になっていた

就職後も、その性格は変わりません。会社から1時間半も離れた場所に家賃3万円台の木造アパートを借り、昼はおにぎり、夜は自炊。交際費を抑えるために同僚との飲み会もほとんど参加しませんでした。

30歳で結婚したとき、雅代さんはそんな正彦さんの倹約ぶりに驚いたといいます。

「電気をつけっぱなしにしただけで“もったいない”って言うの。でも、浪費家よりはマシかなって。子どもの教育費はケチらないことを約束して、あとは家計管理から何から任せることにしたんです」

雅代さんのいうとおり、夫婦の家計管理は正彦さんが担当。毎月の生活費を細かく記録し、1円単位で帳簿をつけるのが日課でした。雅代さんは自分のパート代の一部を小遣いとして受け取っていましたが、それ以外の支出は都度報告していたといいます。

2人の間には男の子が1人。約束通り教育費だけは惜しまず出しましたが、それ以外は節約の日々。外食やレジャーを避ける正彦さんに、雅代さんは不満を募らせていました。

「思い出って多少のお金と引き換えで作るものだと思うんですよ。貯めるばっかりで何が楽しいのかなって。でも、現実的に離婚も難しかったですし、諦めていました。今でも息子はかわいそうだったなと思います」

いよいよ定年、8,000万円の資産を手に入れたが…

そして迎えた65歳での完全リタイア。当時、退職金と貯蓄で8,000万円という資産に到達していました。

やっと気兼ねなくお金を使えると思いきや、長年染みついた節約癖は抜けません。妻との退職祝いの旅行計画を立てても「今は高すぎる」と迷ううちに、季節が過ぎていきました。

そんな折、正彦さんの持病の腰痛が急速に悪化。長距離移動が難しくなりました。痛み止めの副作用で胃が荒れ、食欲も落ち、日に日に気力まで削がれていきます。元気なうちに行きたいところに行っておけばよかったと思っても、もう体がついていきません。

正彦さんは、家計簿を眺めてはため息をつきます。

「退職して1年ですが、相場がいいので資産はむしろ200万円ほど増えているんです。でも、普通に生活する分には年金と少しの貯金で足りるし、あとは介護にお金を用意しておくぐらいで、なんとかなる。……こうなってようやくわかったんです。老後に備えるという名目で人生を先送りして、何にも残っていないことに」

結局、お金があっても、若さも時間も戻らない――その事実に気づいた正彦さん、「せめてお前は楽しんでおいで」と、雅代さんが望めばお金を渡すようになったといいます。それを使って、友人や元パート仲間と旅行や食事を楽しむ雅代さんは、「今がいちばん幸せ」と笑います。

正彦さんは、自らの反省を踏まえて、こういいます。
 

「介護なんかでそれなりに減るでしょうが、最後は家もお金も息子に渡すことになると思います。『貯めておくだけじゃなく、元気なうちに家族で使いなさい』と伝えたいですね」

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