
2025年、日銀がついにETF(上場投資信託)の売却を始めます。これまで日本の株式市場を支えてきた“最大の投資家”が動き出すことで、株価や投資環境にはどのような変化が生まれるのでしょうか?
ETF売却は一見マイナスのように聞こえますが、実は市場の健全化を進め、個人投資家にとっても新たなチャンスとなる可能性があります。本記事では、ETFの基本から日銀の保有・売却の理由、そして初心者が今できる投資の「お得シフト」までをわかりやすく解説します。
日銀が保有するETFとは?なぜそんなに多いの?

はじめに、ETFの基本的な仕組みや、日銀が世界的にも異例の規模で保有している背景について解説します。
ETFとは?
ETF(Exchange Traded Fund=上場投資信託)とは、株式市場で売買できる投資信託の一種です。たとえば、日経平均連動型ETFであれば、225社の株式に少額で分散投資できるように設計されています。
こうしたETFは、個別株よりもリスクが分散できるため、初心者にも扱いやすい商品として人気があります。また、「株の詰め合わせパック」とも呼ばれ、近年ではNISA口座での利用も広がっています。
なぜ日銀はETFを買い続けてきたのか
日銀がETFを買い入れ始めたのは、2010年のことです。デフレ脱却を目指した大規模な金融緩和策の一環として、株価の下支えを目的に導入されました。
特に、「アベノミクス」以降は買入れ額を大幅に拡大し、景気刺激策の柱として注目されました。株式市場が下落すると、日銀がETFを大量に購入し、投資家心理を安定させることで“相場の安全弁”の役割を果たしてきたわけです。
ちなみに、日銀が保有するETF残高は、簿価ベースでおよそ37兆円(時価では約85兆円)にのぼります。これは、東京証券取引所全体の時価総額の数%に相当し、日銀が“日本最大の株主”と呼ばれる理由となっています。
なぜ日銀はETFを売却するのか?

日銀は、長年積み上げてきたETFを、なぜいま手放そうとしているのでしょうか?その理由を整理します。
売却の目的:市場の自立と歪みの是正
日銀がETFを売却する最大の目的は、金融緩和からの「出口」を進めるためです。長年続いた大規模な買い入れは、株式市場の下支えという効果をもたらしましたが、一方で市場の価格形成をゆがめる要因にもなっていました。
特に日銀が上場企業の大株主となった結果、企業経営への影響や「誰が市場を動かしているのか」という不透明さが課題となっていました。こうした状況を正常化し、民間の投資家が自律的にリスクを取り、市場が健全に機能する姿へ戻すことが売却の目的です。
つまりETF売却は、単なる資産処分ではなく、「公的マネー主導の時代」から「民間主導の資本市場」への転換を意味しています。
なぜ100年以上もかけて売るのか
日銀が保有するETFの簿価は、上述のようにおよそ37兆円に上ります。この規模を一気に売却すれば、株価への下押し圧力が強まり、市場が混乱することは避けられません。
そのため日銀は、年間3,300億円のペースで段階的に売却を進める方針を示しています。そうすれば、売却による市場への影響を最小限に抑えつつ、保有資産を徐々に縮小していくことで、投資家が変化に慣れる時間も確保できます。
そのために必要な時間が、100年以上であるわけです。
