
◆「政治とカネ」の本質的改革が見えなかった
公明党が離脱を決めた最大の理由は、自民党側の政治資金問題への姿勢だった。政策協議の場で公明党は、・企業、団体献金を「党本部と都道府県連」に限定する規制強化
・政治資金不記載事案の全容解明
・責任ある“けじめ”の明示
これらを強く求めたが、自民側の回答は「今後検討する」という曖昧なものにとどまった。斉藤代表は「これでは政治改革の決意が見えない」と断じ、「国民の政治不信が続くなかで、もはや“政治安定のための連立”を正当化できない」と語った。
支持母体・創価学会の党員や地方議員の間でも、「自民党の不祥事を説明・擁護するのは限界」との声が噴出。全国行脚を通じて「このままでは党の再生はない」との危機感が共有されていたという。
政治とカネの問題については、高市政権発足後、裏金事件に関係した萩生田光一氏が幹事長代行に留任するなど、“刷新”の姿勢が見えなかった点について斉藤代表は「人事の話ではない。私たちは政治の基本姿勢を問うている」と強調する。自民が「裏金問題はすでに決着済み」とする姿勢を変えなかったことが、決定的な溝となった。結果、7日の政策協議後、「このままでは首班指名で『高市早苗』とは書けない」と伝え、13日に正式な離脱を表明した。
一方で連立解消後、斉藤代表は連日メディアで企業・団体献金規制を巡る自民党との溝を強調したが、本人の過去の収支不記載問題などで批判を受けることに。斉藤氏の地盤である衆院広島3区では、自民の石橋林太郎衆院議員が出馬に意欲を示すなど早くも火種の予感がある。
ジャーナリストの石戸論氏は自公連立崩壊の肝は“感情のもつれ”とし「日本の政治が安定から不確実性の時代へ転じた」と警鐘を鳴らす(以下、石戸氏の寄稿)。
◆「魂の独立」を選んだ公明党に見る日本の政治の未来とは?
今回の新首相選出までの過程には、良くも悪くも安定的でつまらなかった日本の政治が新しい段階に突入したと感じさせられた。自民党の高市早苗総裁誕生から、26年間続いた公明党の連立離脱、浮足だった野党の統一候補交渉と続いたのだから。なかでも大きな衝撃を与えたのは公明党だろう。同党を支援する創価学会で選挙実務を取り仕切る人々に取材したが、見えてきたのは目先の合理性よりも、「感情」が決断を大きく左右したことだった。政治に感情的な対立を持ち込むことをよしとしない人も多いだろう。だが、政治もまた人間の営みだ。感情のもつれはどうにもならない。
特に学会を刺激したのは、かつて公明党を「がん」と批判した麻生太郎氏の復権と、東京都連会長時代に候補者調整で公明党と大揉めした萩生田光一氏が幹事長代行に返り咲いたことだ。幹事長には麻生氏の義弟である鈴木俊一氏が就いたことで、実質的に選挙を仕切るポジションは麻生―萩生田ラインで固まった。
学会のさる大物幹部は今回の離脱騒動を「魂の独立」という言葉を用いて語った。内部では重大な意味を持つ言葉だ。1991年に日蓮正宗から学会が破門されたときに使われたもので、この決別によって学会は飛躍したというストーリーで語られている。

