◆震える声を振り絞り注意喚起
それでも、園児と保護者の視線を背に受けた宮田さんは覚悟を決め、意を決して3人組に歩み寄り、声をかけたそうです。「あのぉ、煙がこちらの方に流れてきて、園児が迷惑しているんです。やめてもらえませんか?」
その瞬間、男たちのひとりが鋭くにらみ返し、声を荒らげました。
「はぁ?俺ら路上で吸ってんだぜ?お前らの敷地じゃねえだろ。ったく、何様だよ」
「もうだめだ」と心臓が縮む思いだったと、宮田さんは振り返ります。後ろに立つ母親たちは不安そうに見守り、子どもたちは遠巻きに状況を伺っている。
宮田さんは勇気を振り絞り目の前の男たちに注意喚起しました。
「ここは都の条例で路上喫煙禁止区域なんです。それに、あそこに防犯カメラがあります。映像を警察に提出したら、あなたたち、すぐ捕まりますよ」
◆ギリギリの決断が功を奏す
一瞬、その場の空気が凍りついたと言います。ただ、男たちは互いに目を合わせ、舌打ちをしながらも言い返してはきませんでした。やがて立ち上がると、慌てたようすで車に乗り込み、そのまま去っていったのです。「正直、膝がガクガクでした。でも、母親たちが『先生、ありがとうございます』と声をかけてくれて……。あの瞬間、やってよかったと心から思いました」
宮田さんにとって、それは勇気を振り絞ったギリギリの決断だったそうです。自分ひとりの問題なら黙ってやり過ごしたかもしれない。けれど園児と保護者を守る立場だからこそ、逃げられなかったのです。
「防犯カメラがなかったら、あそこまで言い切れなかったと思います。でも、あの状況で一歩踏み出さなきゃ、きっと後悔していたはずです」
子どもたちの無邪気な笑顔を守るために立ち向かった一人の先生。その背中は小さくとも、確かな重みを感じさせるものでした。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

