里親には国からの経済的なサポートがある
日本では里親制度や特別養子縁組制度があまり知られていない。とは言え、なにも無関心なわけではない。アンケート調査の結果、6.3パーセントの男女が「里親になってみたい」「どちらかというと里親になってみたい」と回答した。これは里親の対象となる世帯として 30 代~60 代の「夫婦のみの世帯」と「夫婦と子どものみ世帯」を想定し、そこから生活保護世帯を除いた数はおよそ 1,780 万世帯であることから、約100万世帯が潜在的な里親候補者であることを示す数字だ。
「民間で里親のリクルートや支援をしているNPO法人キーアセットの経験では、最初の問い合わせから里親登録まで結びつく確率は2~3パーセントとのことです。もし100万世帯が行動に移してくれれば、今実親と暮らすことが難しいとされている子どもたちの多くに、家庭で生活するチャンスを与えられる可能性があります。もちろん、ただ里親の数を増やせばよいということではなく、研修や支援の拡充も一緒にやっていくことが重要です」
法律上、家族となって子どもを迎え入れるのが養子縁組制度であるのに対し、養育里親は、実親のもとへ帰る可能性のある子どもを一時的に育てることになる。年齢や期間がまちまちなため、子どもを育てたことのある人はその経験がプラスとなる。しかし、里親になることをためらう人が多い。大きな原因は経済面にあるという。
「里親には国からの経済的な補助があって、これを知っていたと答えた人は2パーセント以下でした」
養育里親には、毎月9万円の手当と、約5〜6万円の養育費。虐待を受けた児童や障害児など専門的ケアを必要とする児童を養育する「専門里親」であれば、月額14万1,000円+養育費が国から支給される。
図表:里親の意向はあるが、現状里親になっていない理由

アンケート調査の回答者に、里親には手当が出るといった経済的サポートがあることや、短期の里親もあることなどの情報を提供したところ、最終的に里親の意向者は、6.3パーセントから推計で12.1パーセントにまで増える可能性があることが分かった。日本社会において里親制度や特別養子縁組制度の理解が進めば、高橋さんの思いが叶うのも夢ではない。
まずは子どもたちの現状を知り、救うための制度を知り、今の実態を人ごとではないと認識することが大切だ。未来の担い手たる子どもたち一人一人が幸せに、健やかに育つようサポートすること。これは子どもたち、ひいては私たちの幸せにつながるはずだ。
撮影:十河英三郎
〈プロフィール〉
高橋恵里子(たかはし・えりこ)
上智大学卒、ニューヨーク州立大学修士課程修了。1997年より日本財団で海外の障害者支援や国内助成事業に携わる。2013年、日本財団「ハッピーゆりかごプロジェクト(現:日本財団子どもたちに家庭をプロジェクト)」を立ち上げる。実親と生活することが難しい子どももあたたかい家庭で暮らすことのできる社会を目指す特別養子縁組や、里親の制度を啓発するべく活動を行っている。ハフポストではコラム(外部リンク)を執筆している。