職員が働き続けたくなる環境を整備
──医療機関に共通する課題のひとつが、「入職してくれた人をいかに定着させるか」です。その点、相良病院では企業主導型保育園の設置や独自の定期健康診断など、職員へのサポートが手厚く感じました。
相良医師:職員が安心して長く働けるよう、労働環境の整備にはとくに力を入れています。まず保育園ですが、職員の子どもだけでなく地域の子どもも受け入れられるよう、企業主導型保育園として整備しました。そうすることで運営を安定させつつ、職員が必要なときにすぐ子どもを預けられる環境を確保できています。
“手厚いサポート”という観点ですと、パートを含めて全職員に人間ドックのフルコースを受けてもらっています。ほかにも、福利厚生で歯科口腔外科を受けられますし、今度は美容医療も開始しますので、職員価格で提供していく予定です。

──美容医療まで。そうした福利厚生も採用につながりそうですね。
坂元さん:当院は女性職員の割合が非常に高いので、そこも1つのメリットになればと思っています。また、健康面や美容面だけでなく、メンタルサポートとして外部機関によるストレスチェックのサポートもおこなっています。
──メンタルサポートを院内の医師ではなく外部に委託するのはなぜでしょうか?
坂元さん:もともとは院内の産業医が担っていましたが、院内の人間に話すよりも、専門性のある外部機関の方に話すほうが個人の負担が軽くなるのではないか、という意見が出たんです。2024年に導入したばかりなのですが、これまで赤信号だった2部門の数値に改善が見られています。
病院は個人ではなく組織で働く職場ですので、「個人で悩みを抱え込まない」ということに重きを置いてサポートし続ける環境が大切です。良い結果が見えてきて、風通しの良い環境がつくれるようになってきているのかな、と感じました。
経営と医療をつなぐ独自の組織体制
──採用やメンタルサポートなどを運営・推進するのが、坂元さんが統括する事業本部なのでしょうか?

坂元さん:事業本部は病院運営を支えるバックオフィス全般を担っています。特徴的なのは、単なる事務処理ではなく、病院全体の採用や人材育成、将来の事業展開まで含めて一体的に考えていることです。採用もまずは本部が受け付け、そこから各部署とつないでいく形を取っています。
──一般的な病院の事務部門とは少し違う印象を受けます。
相良医師:相良の場合、本部のフットワークが軽いのが特徴です。多くの病院では事務部門は現場のサポート役にとどまりますが、うちでは経営企画も含めて「次にどう展開していくか」を現場と一緒に考える体制になっています。
もともとは院内に事務所を構えていましたが、本部の範囲を超える業務まで持ち込まれる傾向にありました。そこで別棟に本部を設置し、独立した拠点にすることで業務を整理しやすい体制にしました。経営と現場の間に立ちながらスピード感を持って動けるのは、この体制を整えたからこそです。
坂元さん:そのおかげで、現場の職員も「依頼すれば動いてくれる」という安心感を持てるようになっています。結果的に、働きやすさや定着にもつながっているのだと思います。

