歯科医師で『ザ・タックス 若手歯科医に知ってほしい「税金とお金の基礎」』の著書を持つ松本幸輔さんは「比較的収入が高く、安定している歯科医師は詐欺師から狙われやすい」と警鐘を鳴らす。

◆◆典型的な投資詐欺に騙された経験も
「以前、若手歯科医師が投資をしたくて情報を集めていたら、『元本保証』『主婦でも簡単に稼げる!』という案件を見つけたそうなんです。『これなら損をすることはないですし、確実に利益が出ますよね?』と相談を受けたことがありました。これは絶対に投資してはいけない案件ですよね。時間を味方につけるのが資産形成の基本ですから、投資は早く始めるに越したことはありません。しかし、『おいしそうな話』にすぐ飛びついてしまうのはちょっと危ない。特に投資の初心者だと、どの話を信じたらいいかわからず、迷ってしまうのも当然でしょう」(松本さん)
そんなときにおすすめなのが、「まずは失敗する前提で少額から始めること」だと、松本さんはアドバイスする。
「実は私自身も、若い頃にはいくつか痛い目を見てきました。ちょっと恥ずかしいですが、リアルな失敗談をご紹介します。若い頃、私が飛びついてしまったのは『月利5%、優良投資物件です!』という甘いフレーズでした。軽食付きの無料セミナーに誘われて行ってみると、香港の投資会社が主催する会でした。内容は、高速コンピューターで『アービトラージ』をやって確実に利益を出す、というもの。
アービトラージというのは、簡単に言うと『市場間の価格差を利用して利益を得る手法』ことで、これ自体はまったく問題はありません。でも、月利5%なんて、今なら即アウトだとわかりますよね。いわゆる典型的な『ポンジ・スキーム』だったんです」(松本さん)
ポンジ・スキームとは、高配当を約束して出資者を集め、新しい出資者のお金を古い出資者に配当としてバラまいて信用させる詐欺のことだ。
「多くの人から多額の出資金が集まったタイミングで、残りの資金を持ち逃げされるのが典型的なパターンです。ポイントは、最初はある程度の配当を出して信用させるという点です。私も最初の3か月はちゃんと配当が振り込まれていたんです。それで信用してしまい、まんまと追加投資してしまった。
でも、4か月目には音信不通。きれいに消え去っていました。まさに教科書どおりの騙され方だったというわけです」(松本さん)
他にも、最近増えている「暗号資産」(仮想通貨)関連の詐欺にも引っかかったことがあるという。
「私がやられたのは、マイニング関連の詐欺です。マイニングとは、ブロックチェーン上の取引データを検証・承認することで、その報酬として新たに発行される暗号資産をもらうこと。それ自体に問題はなく、むしろ暗号資産には必要な要素です。
詐欺では『モンゴルにマイニング施設があります』と言っていて、きれいなサイトもありました。ログインすれば、ちゃんと利益も表示されていたんです。でも、ある日、そのサイトごと消滅。見事にやられてしまいました……」(松本さん)

◆◆SNSではAIを使った本人の詐欺動画が激増
最近の詐欺はさらに巧妙になっていると、松本さんは警告する。「有名経営者や著名な経済アナリストなどの顔写真を無断で使い、『私も投資してます!』なんて嘘で信用させるSNS広告が激増しています。しかも、最近ではAIを使って本人の音声で話す『成りすまし動画』広告も出てきていて、ますます巧妙になっています。
見破るのが難しくなっているからこそ、『お金の知識』や『ネットリテラシー』が自分を守る武器になります。怪しい投資話を見抜くコツとしては、常に『おいしい話には裏がある』と思っておくことです。たとえば、『元本保証』『高利回り』『絶対に儲かる』なんて言葉が出てきたら、それだけで警戒レベルはMAXにしていい。
冷静に考えてみてください。本当に儲かる話だったら、なぜわざわざ他人に教えるのですか? 自分だけでこっそり稼げばいいじゃないか、という話です。しかも、“本当に特別な投資情報”は、たいてい超富裕層や限られた人たちのもとにしか回ってきません。私たちのところまで落ちてくるものは、ほぼ『おこぼれ』か『ニセモノ』だと思っていいです」(松本さん)

