今週のテーマは「4年も交際した女とは結婚しなかったのに、次の女とは、たった1年弱で結婚した理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:4年付き合った彼女と別れた男が、“次の女性”と即決婚した本当の理由とは?
― この子と結婚する。
交際わずか半年で、僕は梨花と結婚することを決めた。そして先日結婚式を挙げ、幸せな気持ちに包まれる。
しかし梨花との結婚はとんとん拍子に進んだ一方で、僕の中で一人だけ、「申し訳なかったな」と思っている相手がいる。
それは梨花と交際する前に付き合っていた、さゆりだ。
今年で35歳になるさゆりは、元気にしているだろうか。
さゆりとは4年も交際していた。そのうち3年は同棲もしていたし、相手は結婚したい気持ちでいっぱいだったことは知っている。
でも僕はどうしてもさゆりと結婚する気にはならず…いや、自分でも当時は結婚願望がなく、「一生独身でもいいかな」と思っていたほど、結婚なんて考えられなかった。
しかし、一方の梨花とはすぐに結婚した。
年齢で言うと梨花は27歳だけれど、そこはあまり関係ない。
では結婚に対する僕の意識の中で、二人の差は何だったのか?それは意外に、わかりやすい事だったのかもしれない…。
A1:一緒にいるのが“当たり前”になってしまった。
梨花とはマッチングアプリで出会ったのだが、元カノのさゆりと出会ったのは、共通の知人の紹介だった。
さゆりに出会ったのはもう5年も前のことになる。
綺麗な子で、当時はWebデザイナーの駆け出しだったさゆり。仕事も一生懸命頑張っていて、素敵な子だった。
出会ってからすぐに意気投合し、自然な流れで交際をすることになった僕たち。順調に進んで1年後、さゆりのマンションの更新が近づいてきたタイミングで、一緒に住むことになった。
同棲開始後も僕たちの関係は変わらず、一緒にご飯を作ったり、近所へふらっと飲みに行ったり。そんな毎日が、楽しかった。
ちなみに家賃などの割合は、広告代理店勤めの僕が8割。そして彼女が2割。この割合もすぐに決まったし、僕が多く払っている分、さゆりは積極的に家のことをしてくれて助かっていた。
「湊、いつも多めに出してくれてありがとう」
「当然だよ。むしろ少しでも出そうとしてくれて、ありがとう」
お互いがお互いを尊重しており、プライベートも仕事もちゃんと頑張っている。一緒にいても気も使わず、楽だった。
とても、バランスの良い二人だったと思う。
しかし同棲とは、無常に時を蝕んでいくもの。
気がついた時には同棲を開始してもう3年が経っており、さゆりは33歳になった。
そんなさゆりの誕生日を、中目黒のイタリアンでお祝いをしている時のこと。事前に店の人に頼んでいたケーキが出てきたタイミングで、さゆりは何か言いたそうにしている。
気のせいかと思っていると、家に帰っても、ずっと何か言いたげだ。
「あのさ、湊…」
「ん?どうした?」
「いや、何でもない。今日はありがとう」
何となく、さゆりが言いたいことはわかっている。たぶん「この先のこと考えているの?」とか「私たち、いつかは結婚するの?」とかだろう。
僕はダイレクトに聞かれるのが嫌で、申し訳ないけれど、早々に寝ることにした。
「うん、おめでとう。明日朝早いから、俺もう寝るね」
「え?」
戸惑っているさゆりを横目に、僕はさっさとお風呂へ入り布団を頭から被る。もちろん、すぐに寝れるはずはなく、「本当に今後、どうしようかな…」と考えていた。
さゆりのことは好きだし、一緒にいるのが当たり前になっている。
だからこそ、わざわざ“結婚”という形にする理由もない気がしていた。
A2:一度冷めた関係を再構築する難しさを身をもって体感したから。
ただこの日以降、さゆりは度々結婚の話を持ち出すようになった。
「湊。結婚のこと、どう考えてるの?」
交際は3年目に突入し、同棲も2年している。だから、さゆりが言いたいこともわかる。
でも今の心地よい関係をわざわざ壊すような形で、結婚する意味が僕にはわからない。
「ちゃんと考えてはいるけれど、別に今この状況でする必要なくない?一緒にいて楽しいし…何より、さゆりはほぼ家族みたいなものじゃん。そもそもだけど、結婚して、何が変わる?」
「正式な家族になれるんだよ?」
「ただの紙切れ上の約束でしょ」
そうやって、僕は結婚の話が出るたびに拒否してきた。でも今から考えると、ただ逃げていただけのようにも思う。
「状況が特に変わらないならば、結婚してもいいじゃん。なんでそんなに結婚したくないの?」
「何かに縛られるのが怖いんだよ」
「私、別に束縛とかしていないよね?」
さゆりは束縛もしてこないし、どんなに帰りが遅くなっても、お互い無関心。それは自立した素晴らしい関係とも言えるけれど、ある意味もう冷め切ってもいる関係だった。
同棲が3年目に突入するとそれはさらに顕著になり、お互い家で会っても話すこともない。ケンカをしているわけではないけれど、特に話さない…。
そんな悲しい関係になっていた。
そしてさゆりが34歳になった夏。僕が久しぶりに「帰省する」と伝えると、さゆりは「一緒に行く」と言い出した。
「湊が帰るなら、一緒に行ってもいい?ご両親に挨拶もしたいし」
「いやいや、それはいいよ」
「でも、私の両親には会ったのに、私だけご挨拶していないもの変だし…」
「それはさゆりのご両親は東京だからね」
さゆりのご両親とは、会って食事をしたことがある。しかし僕の両親にわざわざ会いに行って挨拶…となると、それはもう結婚だ。
その時に、改めて思った。
もう、僕たちの関係は終わっていることに。
旬はとっくに過ぎ、“同棲”という妥協の中でダラダラと時間を潰しているだけ。お互い、どこかでわかっている。二人の間に、未来はもうないことに。
「あのさ…本当に将来のこと、考えてる?湊はいつも口だけで、私たちの将来のことなんて、何も考えてないでしょ」
「そんなことないよ」
「じゃあなんで、ご両親に私のこと紹介するのを嫌がるのよ?」
「まだ時期尚早というか…結婚が決まったわけではないんだし」
「その態度、何なの?全然私のこと大事に思ってないじゃん」
「何だよそれ。もういいよ、別れよ」
きっかけは、こんな些細なことだった。
でも、長過ぎた僕たちの関係は、こんなことであっけなく終わってしまった。
ただ心の中でどこかほっとしていた自分もいる。もっと早く別れてさゆりにも違う未来を作ってあげるべきだった。
大事にしていたし、好きだったけれど、一度ぬるま湯に浸かった関係を、再度沸騰するまで温め直して結婚まで持っていくのは至難の業だ。
お互いにそんなモチベーションはないし、結婚する意味がないから。
次の人とすぐに結婚を決めた理由?
それは至って簡単で、もう二度と、こんな事を繰り返したくなかったからだ。
大人になるとタイミングがすべてだと思う。仕事のタイミングや出産など、人それぞれにそのタイミングはある。
僕の場合、「次に付き合う人とはすぐに結婚する」と決めてきた。
だから梨花とは、交際する当初から結婚を強く意識していたし、「いいな」と思ったら、同棲なんてすっ飛ばして結婚という道を選んだ。
― さゆりとも、同棲のタイミングで結婚をしていたら、きっと違ったんだろうな…。
そんな、ありもしない現在のことをたまに思う。
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不機嫌な男女

