◆ナイキのエアフォース1が歩きづらい理由
靴選びで多くの人が陥りがちな失敗は何ですか?「多くの方は、スニーカーは歩きやすいと思い込んでいます。もちろん大半のスニーカーは履きやすいし、歩きやすい。長い旅行を革靴ひとつで、なんて無理ですよね。一方で、『どんなスニーカーでも疲れる』という声も絶えません。例えば、ナイキの代表的なスニーカーであるエアフォース1。『有名なスニーカーだからこれでウォーキングしてるんですが足が痛くて早足だと10分も歩けない』みたいなご相談はめちゃくちゃ多いです。そのモデルは歩きづらいですよ、と言っても、なかなか理解してもらえません。『ナイキの「エア」はクッションで、歩くためのものでしょ?』と怪訝な顔をされます。私自身も好きで履いていますが、正直言って歩きにくいんです」
それはなぜですか?
「なぜかというと、エアフォース1もエアジョーダンもバスケットボールシューズだからです。バスケットボールは走るより、止まる、ターンするといったブレーキをかける動作に重きが置かれたスポーツです。つまり、エアフォース1もエアジョーダンもブレーキをかけるための靴です。ブレーキとアクセルのペダルを同時に踏んでいるようなものなので、歩くだけという目的にはきわめて非効率なんです」
バスケットシューズをカジュアルに履くことは問題ないのですか?
「ファッションとして楽しむのは大いに結構ですし、実際私もヘビロテで履いてますが『歩く用途』で履くとなると、とにかく疲れます。疲れない靴が欲しいのであれば、前に進むための靴を買わねばなりません。ナイキの2万円のバスケットボールシューズより、ワークマンで売っている3000円のランニングシューズのほうがはるかに歩きやすい」
歩くための靴の特徴は何ですか?
「足の指が曲がるところをフレックスポイントと呼びますが、歩くための靴は必ずここで曲がります。例えば、ワークマンのハイバウンスバラストウォーク(2900円)はフレックスポイントできちんと曲がります。他方、エアフォース1や、本来はテニスシューズであるアディダスのスタンスミスは、ほぼ曲がりません」
クラシックなデザインのスニーカーにも同じことが言えますか?
「コンバースのオールスターも一度は履いたことのある人が多いでしょう。しかし、大人が毎日オールスターを履いて通勤や立ち仕事をしていたら、膝を壊します。オールスターも100年以上前に設計された正真正銘のバスケットボールシューズだからです。10月から大幅にリニューアルされましたが、それを差し引いてもあくまでもファッションスニーカーです。アディダスのスーパースターも1970年代にNBAの大半の選手が履いていたという正真正銘のバスケットボールシューズ。アディダスのスタンスミスはテニスシューズ。どちらもがっしりとしたつくりに見えて、半世紀前の設計ということもあり、歩くという用途には向いていません」
◆靴のサイズを過信してはいけない
靴のサイズ選びで間違いが多いとも言われていますね。「『靴のサイズはなん㎝ですか?』と聞かれて、即答できる方は要注意です。自分のサイズ感を過信するあまり、ネットで買うとかなりの確率でハズレを引きます。私のもとにも、『ネットで買った靴が合わない』という相談は、非常に多く寄せられます」
靴のサイズ表記には決まりがないのですか?
「JISという決まりはありますが、はっきり言ってザルですね。過去10年間、靴のサンプルをつくってきたので、よくわかるのですが、メーカーは靴をつくるときにサイズを測っていません。縦の長さで言えば、25㎝の靴はメジャーで測っても25㎝ではなく、『25㎝くらいだから25㎝にしよう』と、かなり適当に決めています。幅に関してはさらに曖昧で、木型(足型)の周りが本当はDとかEであっても、『3Eって書いときゃ売れるから』というだけの理由で、街中には3E表記の幅広の靴ばかりがあふれています」
店で測ってもらえばいいのでは?
「たしかに今は店でAI搭載の最新機器によって、無料で足のサイズを測定してくれますが、その考えかたも甘いんです。どんな高級マシーンでも測るのは、じっと止まった状態の足です。止まっている足のサイズと、動いている足のサイズは、当然のことながらまったく異なります。もちろん、重要なのは動いている足のサイズです。だから、靴を履いて店のなかを歩き回るという原始的な試し履きにはかなわないのです。歩き方、体重移動、筋肉の伸縮率などは自分の足のセンサー、要は足の感覚を信じるしかありません」

