
1.退職代行とは?
退職意思を代わりに伝えるサービス
退職代行とは、会社を辞めたい従業員に代わり、退職手続きをおこなうサービスです。退職手続きには、退職意思の伝達や退職日の調整、有休消化の交渉などが含まれます。代行可能な手続きは、利用するサービス提供企業によって異なります。
退職代行の種類
退職代行サービスは大きく分けて3種類あり、運営元ごとに代行できる内容が異なります。
弁護士 | 労働組合 | 民間企業 | |
|---|---|---|---|
退職意思の伝達 | ◯ | ◯ | ◯ |
退職日等の交渉 | ◯ | ◯ | × |
訴訟対応 | ◯ | × | × |
弁護士が運営する退職代行
弁護士が企業との間に立ち、退職手続きをおこないます。退職意思の伝達から、退職日の調整、有給休暇消化の交渉、残業代などの未払い賃金の請求、パワハラに対する慰謝料請求に至るまで幅広く対応できる点が特徴です。
労働組合が運営する退職代行
労働組合は法律で団体交渉権が保障されているため、退職意思を伝えるだけでなく、未払い賃金の交渉や退職書類の発行依頼などもできる点が特徴です。労働組合が運営する退職代行には、運営自体を労働組合がおこなっているタイプと、民間企業が運営し、労働組合と提携しているタイプがあります。
労働組合というと、同じ会社の従業員によって構成される団体をイメージするかもしれません。しかし、退職代行を提供する労働組合は、特定の企業や職業、産業に関係なく結成された団体で、すでに自社の組合に入っていても利用できます。
民間企業が運営する退職代行
民間企業は退職の意思伝達のみをおこないます。これは、弁護士法により弁護士以外の者が報酬目的で法律事務をおこなうことが禁じられているためです。対応できるサービス内容には限りがありますが、比較的安価に設定されている点が特徴といえます。
tips|退職代行は違法?
退職代行サービス自体は違法ではありません。従業員には「退職の自由」があり、退職の意思をどのように伝えるかは本人の自由です。
ただし、弁護士資格を持たない民間業者が、退職日の調整や未払い賃金の請求など企業との交渉をおこなうと弁護士法第72条に抵触する「非弁行為」とみなされるおそれがあります。
また、サービス提供会社が弁護士を斡旋し、紹介料を受け取っていたと報じられた事例もあります。こうした弁護士や労働組合への紹介・斡旋に関する行為は、東京弁護士会が非弁行為として注意喚起しています(参考:東京都弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反」)。
退職代行にかかる金額
退職代行の費用は、利用する企業やサービス内容によって幅があります。運営元が民間企業の場合、退職の意思を伝えることに限定されているため、費用は1〜3万円程度と比較的低く設定されています。労働組合が運営する場合は、2〜3万円が相場です。一方、弁護士が運営する場合は、各種交渉や訴訟対応までカバーしているため、5〜10万円程度とやや高めに設定されています。
2.退職代行を利用する理由
法律では、退職の申し入れから2週間経てば勤務先の承諾がなくても会社を辞めることができると定められています。それでも、さまざまな理由により退職代行を利用するケースがあります。退職代行を利用・検討している医療・福祉従事者の声とともに、利用する主な理由を紹介します。
人間関係を構築できていない
働くうえで人間関係は切っても切り離せません。厚生労働省がおこなった雇用動向調査でも、前職を辞めた個人的理由のうち「その他の個人的理由(21.9%)」に次いで多かったのが、「職場の人間関係(11.1%)」でした。
とくに、上司と信頼関係を構築できていない場合、退職を言い出しにくいと感じることもあります。また、人手不足の職場では引き止めを懸念する人もいます。
人間関係や残業の多さで退職するのは甘えですか?
もう本当にしんどいです。3園目にして初めて退職代行を使いたいと思うようになりました。
引用元:ホイクトーク
労働環境に問題がある
残業や休日出勤が多く、賃金や勤務地などの労働条件が合わない場合、働くモチベーションの維持が難しくなります。また、給料や残業代の未払いなど労働環境に問題があると、退職を切り出しにくいと感じる人も少なくありません。
役職をしており、サービス残業が多く帰るのが22時ぐらいになることがあります。
施設長などに言っても日中に少し抜けてやればと。
そんなことしたら現場が大変ですが現状を理解しておらず。
身体と精神的にも限界で面談もしたくなく、退職代行をして退職を検討しています。
引用元:カイゴトーク
すぐに退職する必要がある
職場でのストレスや、不満を抱えたまま働き続けることが精神的・肉体的に限界だと感じる人にとって、「すぐに辞めたい」という希望は切実です。しかし、退職を切り出した際に、引き止めや説得を受け、スムーズに退職できないケースも少なくありません。こういったプレッシャーから解放される手段として退職代行が選ばれています。
──退職に向けての話し合いはどのように進みましたか?
休職中も師長さんと定期的に面談があったんですが、初めに「辞めます」って伝えたときは「また違う道でも頑張れるよ」って言ってくださっていたんですけど、その次の面談からコロッと変わって「今辞めても行くところがないでしょう?」と引き止められました。
何度か「辞めたい」と伝えていたのに、「日勤だけでも」と復職する方向で話を進められていたので、やむを得ず退職代行を使うことにしました。
──退職代行はどのように利用しましたか?
(復職が迫った)7月末にネットで調べて依頼しました。料金は2万円ちょっとだったかな? 代行業者から病院に「本人に連絡しないように」って連絡が行くので、それ以降は病院側と一切やりとりすることなく退職できました。寮に住んでいたので病院の人が来るんじゃないかって怖かったんですけど……。誰も来なかったです。

