◆「インバウンド比率」は目標を大きく下回る結果に
万博の機運醸成費103億円も国負担。この費用は全国的な認知度を向上させ、国民の興味関心や期待感を高めるためのもの。関係機関と連携しながらプロモーションを行い、各自治体と万博参加国との交流を促進する費用です。この費用は万博のチケットの販売促進のみを目的としておらず、参加国・地域と各自治体との交流促進といった、地方創生など国の政策を推進する観点から国が負担することになりました。
例えば、万博を契機とした観光客誘客への取り組みとして、宮城県は道の駅に多言語タッチパネル式道路情報提供施設を整備しています。新たな周遊ツアーも造成しました。
しかし、万博の訪日外国人割合は6.1%であり、12%程度としていた想定を大幅に下回っています。万博を契機として、関西圏以外の地方自治体にどれほどのインバウンドによる経済効果が生じたのかは不明確。機運醸成費を国負担としたお題目が結果として崩れ去っているように見えます。
結局のところ、万博を起点とした地方自治体へのバラマキの一環だと受け取られても仕方がないのではないでしょうか。
◆若者のためのイベントが「シニアばかり」
そして、チケットの販売枚数は2200万枚で、目標の2300万枚を下回りました。枚数以外にも、来場者の属性が気がかり。クロスロケーションズの調査では、50代以上が来場者全体の7割を占めたことがわかりました。60代以上は5割に達しており、来場者の大半がシニア層だったのです。
万博の機運醸成委員会は、取り組み方針である「機運醸成行動計画ver.2」において、ターゲット層の筆頭にファミリーを含むこども・若者層を置いていました。未来を担うこども・若者層に「見て」、「体験して」、「感じてもらう」ことが重要だとしていたのです。
そのために自前のSNSやインフルエンサーを活用し、万博の魅力をアピールしていました。大学コンソーシアムとの連携、学生ボランティアの参加促進も行っています。
しかし、クロスロケーションズの調査では、10代から30代は2割にも届いていません。
結局のところ、1970年の大阪万博に熱狂していたかつての若者や子供たちが、追体験するために足を運んだと見ることができます。そうなると、最先端技術など世界の英知を結集して新たなアイデアを創造し、イノベーションを起こすという本来の趣旨が揺らいでしまうようにも見えます。
大阪・関西万博は、長い間負の遺産として知られた夢洲を復活させるため、インフラ整備を急ピッチで進めて統合型リゾート建設の足掛かりを作りました。万博の経済効果は大きく、来場者の満足度が高いのも間違いありません。
とはいえ、問題点が多かったのも事実であり、手放しで喜べる状況ではないような印象を受けます。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

