ファーマーズレストラン オルトのテラス席農業が盛んな・山梨県ならではの挑戦
山梨県は、農業と福祉の連携や、農業分野から脱炭素社会を目指す施策など、エシカル農畜産物等の普及に力を入れています。今回は、「農福連携」と「4パーミル・イニシアチブ」の取り組みを体験できる、1日限りのイベントに参加してきました。
農福連携は、障害のある方が農業に取り組んだり、農家と連携して農作業に取り組む活動。今回お伺いした岩窪農場では、除草や石拾いなどの簡単な作業からスタートし、近年では野菜の苗の植えつけなども依頼しています。大塚広夫代表は、「労働力として見るのではなく、一緒に働く仲間として受け入れています」と話します。
岩窪農場の大塚広夫代表「最初は完全有機で挑戦しましたが、今は減農薬で育てています。主力は米ですが、今の時期は『アイコ』という味が濃いトマトが採れます。他にも、夏はとうもろこし、ズッキーニ、ピーマン。冬はいちごを1万6,000株ほど育てていて、ピーク時は1日100kgも収穫できることがあるんですよ」(大塚代表)
アイコ(トマト)真っ赤に色づいたアイコは、シャキッとした食感で食べると甘みが広がります。今回、農福連携に取り組む農業の実態を探りつつ、その畑で採れた新鮮野菜を使った絶品ランチをいただいてきました。
南アルプス連峰を眺める特等席。絶景テラスのレストランで口福タイム
岩窪農場、県産の季節の食材を使用したランチ岩窪農場で採れた旬の野菜と、県産の季節食材を味わえるのが、農場直営レストラン『ファーマーズレストラン オルト(Farmar's Restaurant Orto)』。ランチでは、「アイコ」や「よつぼし苺」、マコモダケ、古代米などをいただきました。前菜でいただいたアイコのジュースは、濃厚で満足感たっぷり。山梨県内の「道の駅小淵沢」などでも購入できます。
甲州ワインビーフのロースト白イチジクのソースを添えた甲州ワインビーフは、きめ細かく柔らかい口当たりで、口に含むとジュワッと旨味が広がります。マコモダケのパンチェッタ巻きは、シャキシャキした食感とともに、ほんのり感じる甘みが絶品。
農園よつぼし苺のアイス [食楽web]デザートは「よつぼし苺のアイス」。いちごの旬は、12月〜5月くらいまでですが、たくさん収穫できるので、保存してデザートにしたりジャムにしたりして1年中、メニューで提供しています。
グリド甲州山梨県内で収穫された甲州ブドウを100%使用した「グリド甲州」。フレッシュな果実香とスパイシーなニュアンスで、食事がどんどん進みます。
4パーミル・イニシアチブで取り組む農業
山梨県はサスティナブルな未来を目指す「農福連携」の他に、「4パーミル・イニシアチブ」にも取り組んでいます。4パーミルの「パーミル(%)」とはパーセント(%)の10分の1の単位のこと。4パーミルは0.4%を指しています。
「4パーミル・イニシアチブ」とは、土壌中に含まれる炭素を増やすための取り組み。世界の土壌表層(30〜40cm)にある炭素量を年間4パーミル増加させることができれば、人間の経済活動によって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにすることができるという考え方。日本を含む744の国や国際機関などが参画しています。
醸造用ぶどう山梨県の4パーミル・イニシアチブの取り組みとして、剪定枝を炭化させて地中に埋めることで、半永久的に炭素を留めることや、果樹園内に草を生やす草生栽培などを実践しています。今回は、取り組みを実践しているワイン醸造用ブドウ畑を見学しました。
さらに、稲作では夏に田んぼの水を抜く期間を長くすることで、メタン発生の抑制を目指しています。こうして作られた米は、カントリーエレベーター(*)に持ち込まれます。これにより、米の品質を落とさず、常に一定の状態に保ち、必要なときに必要なだけ出荷する体制を整えています。
*農家が収穫した米を籾もみのまま持ち込み、温度や湿度を保って蓄えておく施設のこと。

山梨県が取り組む「農福連携」や「4パーミル・イニシアチブ」といったサスティナブルな活動は、農業分野を中心にこれからどんどん広がっていくことでしょう。
●DATA
Farmer’s Restaurant Orto(ファーマーズレストラン オルト)
住:山梨県北杜市小淵沢町4869-1
TEL:0551-45-8545
営:ランチ11:00〜15:00(L.O.14:30)
休:水曜日 ※その他、Instagramをご確認ください。
@orto.2025
(取材・文◎加藤朋子)
