リターン重視の投資家にとっては、ヘッジはマストではない
過去のデータによれば、長期的なリターンの最大化を重視する投資家にとっては、ヘッジは必ずしも必要ではないことが示唆されています。
2000年以降、持続的な円安と、日本の低金利環境によりヘッジコストがおおむねマイナス(月平均-0.19%)だったことを背景に、ヘッジなしの金投資の月次リターンがヘッジありを平均0.31%上回っています※10。
さらに、金と円はともにセーフヘイブン資産とみなされているため同方向に動くことが多く、これによりヘッジなしの投資家は、ある程度の自然な分散効果が得られ、積極的な為替リスク管理の必要性が低減されます。
ただし、リスク管理(特に急激な円高への備え)を優先する投資家にとってはヘッジが有益であることはわかっています。もっとも損害が大きいレジームは「金:安(-)と円:高(-)」(レジーム4)であり、その間のヘッジなしの平均月次リターンは4.80%の下落、それに対しヘッジありのポジションでは3.47%の下落となっています※11。
円安が続くかどうかが、投資判断のカギに
今後に向けての重要な考慮事項は、円安が持続するかどうかです。日米の金利差が縮小した場合は円高に転じる可能性があり、日本の投資家にとって金価格上昇による利益が減少、もしくは帳消しにする可能性すらあります。
そうしたシナリオでは、ヘッジありの配分がポートフォリオ分散効果としての金の役割を確保するのに役立つでしょう。逆に、円安が持続する場合は、ヘッジなしを維持することで期待リターンが高まる可能性がありますが、ボラティリティも増大すると思われます。
円相場の先行きに確信が持てない投資家にとっては、バランスのとれた配分戦略が賢明な選択かもしれません。
円建てのヘッジあり金に50%、円建てのヘッジなし金に50%を配分することで、為替リスクを管理しつつ、円相場の変動による上振れの可能性を確保することができます。
この手法は分散効果をもたらし、極端な為替変動の影響を緩和します。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)
