
日本政府が抱える巨額の財政赤字。しばしば活発な議論が交わされ、ときに紙幣の大量印刷や預金封鎖といった過激な解決策が叫ばれることもありますが、実際には日本政府の財政破綻が起こる可能性は低いと考えられます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。
資金繰りが続くから破綻しない
日本政府の財政赤字は巨額で、毎年の赤字が積み重なって借金の額も巨額に上っています。そこで、日本政府が破産する(財政が破綻する)かもしれないと、心配している人も多いようです。
しかし、筆者は日本の財政が破綻する可能性は低いと考えています。「日銀に紙幣を印刷させれば政府の資金繰りは問題ない」などというつもりはありません。「財産税で家計金融資産の半分を召し上げてしまえば借金は返せる」などというつもりもありません。そんなことをしなくても、政府の資金繰りは破綻しないのです。
企業でも政府でも、倒産するのは資金繰りが破綻した時です。黒字でも資金繰り倒産はあり得ますが、赤字でも資金繰りがまわっている間は破産しないのです。問題は、民間企業の場合には赤字が続くと銀行に見放されて資金繰りが続かなくなる、ということなのですが、日本政府にはそうした懸念はほとんど無いのです。それは、日本人投資家にとって日本国債が最も安全な資産だからです。
円建て資産の中では、日本国債が最も安全です。メガバンクに預金するより札束で持つより安全でしょう。米国債の方が紙屑になるリスクは小さいかもしれませんが、円高で損をするリスクを考えると、日本国債の方が安全でしょう。そこで、投資家たちは「仕方なく」日本国債を買うことになります。多くの投資家が日本国債を買えば、日本政府の資金繰りは懸念がなくなりますから、投資家たちの日本国債に対する恐怖心が薄らぎ、一層多くの投資家が日本国債を買うようになるでしょう。「他の投資家たちが買っているから大丈夫だ」と皆が考えているとすれば、投資家同士が互いに励まし合っているということになりますね(笑)。
数千年後には問題が自然に解消する
少子化が止まりません。一人っ子と一人っ子が結婚して一人っ子を産む流れが数千年続くと、日本人は最後の1人になり、その子は家計金融資産2,200兆円を相続します。その子が永眠するとそれが国庫に入るので、国の借金はすべて消えます。数千年待てば、問題は一気に解決するのです。
もちろん、本当にそんなことが起きるとは思っていませんが、この思考実験は2つのことを教えてくれます。1つは「政府の借金は大きすぎるから、いつか破綻するはずだ」と考えるのは短絡的すぎる、ということです。
もう1つは、「政府の借金は子孫のクレジットカードで飲み食いしているようなもので、世代間不公平だ」というのも誤りだ、ということです。遺産のことも考慮すれば、世代間の不公平などありません。あるのは遺産が相続できる子とできない子の世代内不公平です。だから筆者は相続税の増税を主張しているわけですが、その話は別の機会に。
余談ですが、子孫の負担を減らそうとして財政再建のために増税すれば、筆者たちは預金を引き出して納税するので、子供たちに引き継ぐ遺産が減ります。そんなことをしても子孫は喜びません(笑)。
