◆多くのハードルがあったが、不安はなかった
ーー神職という全く異なる世界に飛び込むことへの迷いや葛藤はなかったか。村山陽子:むしろ、非常に自然な流れでした。もちろん、簡単な道ではないことは分かっていました。受験には神社本庁の推薦や奉職先の内定が必要など、多くのハードルがありましたが、幸いにもご縁に恵まれ、なんとか乗り越えることができました。これまでの人生も常に挑戦の連続でしたから、新しい世界へ飛び込むことへの不安よりも、学びたい、知りたいという気持ちの方が圧倒的に強かったのです。
神職になろうと決意してから、國學院大學に通い始めたのですが、神職について学ぶ授業は、天皇陛下に宮中祭祀でご奉仕される先生が教鞭をとることもあり、非常にレベルが高く、毎日が感動の連続でした。知的好奇心が満たされる心地よさと、これまで経験したことのない厳かで奥深い世界への魅力が、迷いを打ち消してくれました。
◆現在はボランティア。神社の将来を模索
ーー実際に宮司として勤めてみて、想像と違った点や特に大変だったことは何でしたか?村山陽子:最初に奉職した神社では、なかなか地域に溶け込めず、「よそ者」という感覚が常にありました。受け入れてもらえていないという、見えない壁を感じたのは想像と違った点です。
また、現在奉職している神社は、東京から通っておりますので、その分の経費を考えますと、今の時点では100%ボランティアです。最初の3年間はしかたないと納得して決めていますが、給料はなく、むしろ持ち出している状態です。まずは神社運営が軌道に乗り、せめて交通費だけでも捻出できるようになることが当面の目標です。そして何より大変なのは、後継者探しです。小さな神社の担い手は全国的に不足しており、この神社を100年、1000年先まで残していくために、どうすれば次の世代にバトンを渡せるか、日々模索しています。

