ちょっとでも珍スポット、B級スポットに興味があれば、一度は名前を聞いたことがあるかもしれない。北海道の「レトロスペース・坂会館」だ。ネーミングから推測できるように、ざっくり一言で言えば、私設のレトロ博物館である。超高齢社会になって何年もたち、昭和を懐かしむ人が増えているし、昭和ブームもあり、日本全国でレトロ博物館を見かけるようなったが、それらとは一線を画している。明らかに方向性が違うのだ。

◆「坂ビスケット」の工場の一角に…
場所は、札幌市の中心部から地下鉄か、もしくはバスで20分ほど。北海道民のソウルフード「坂ビスケット」で知られる坂栄養食品の工場の一角にある。「坂会館」は、もともとは坂栄養食品が経営するレストラン。結婚式場としても利用できたが、レストランが閉店してからはずっと物置状態であった。そこで、創業社長・坂 一長氏の趣味のカメラ類や奥さんの集めたものに、息子の坂 一敬さんが「個人的に」集めていたコレクションを加え、建物の1階部分を改装して展示。自ら館長となって1994年にオープンしたのが「レトロスペース・坂会館」だ。
◆「ドン・キホーテ」を彷彿とさせる展示
そこにあるのは、父親の骨董カメラ類など例外を除けば、使われなくなり捨てられていた日常生活用品がかなりを占める。館長によると、「どっちかというとね、バーコードが付く前のもの。バーコードが広まったのが、だいたい昭和の終わり頃までだからね。バーコードの読み取り機械を導入できない小さな店はどんどん消えていった」と説明があった。なるほど、そんな時代の区切り方もあるのか。髪の毛が伸びそうな日本人形、草履、日本酒ラベル、タバコ、マッチ、1950年代の雑誌「平凡」、昔の文房具店をそのまま再現したような文具コーナーなどありがちな展示もあるけれど(床から天井近くまで隙間なくギチギチな展示は「ドン・キホーテ」を彷彿)、壁中にヌード写真が貼られていたり、春画の描かれた湯呑みや小皿、SM関連のバラムチ(バラけたムチ)、スパンキングパドル(柔らかい特大シャモジ型でお尻を叩くもの……らしい)、雑誌、さらに縄で縛られたリカちゃん人形がズラリと並ぶ部分も。
極めつけは、階段下にある女性下着がアート作品のように飾ってある部屋もある。もちろんエロもその時代を映す鏡であり、大事な資料だけれど、館長の趣味色も濃厚な感じ。

