老後破綻を防ぐ「資産の使い方」
幸子さんたちが直面しているのは、まさに“資産の流動性リスク”です。お金を持っているかではなく、「お金を動かせるか」が問われる時代になっています。筆者が提案したのは、以下の3つの方法でした。
1.リバースモーゲージの活用
自宅を担保に老後資金を借り入れる制度です。契約者の死亡後に売却して返済するため、住みながら資金を確保できます。最近では民間金融機関のほか自治体提携型も増えています。ただし、物件評価や金利変動リスクを十分に理解したうえでの検討が必要です。
2.部分売却・持分売却という選択肢
タワマンの一部持分をファンドや不動産会社に売却し、現金を確保する仕組みも登場しています。共有名義のケースでも、専門家のサポートを受けながら段階的に現金化が可能です。
3.“老後の固定費”の棚卸し
管理費・保険料・通信費など、毎月の固定支出を見直すだけでも月2〜3万円の改善余地があります。特に生命保険は、子が独立後も高額な保障を継続しているケースが多く、契約内容の再整理で大きな節約につながります。
幸子さんたちは相談後、リバースモーゲージを利用して月10万円の追加収入を得ることができました。「お金の不安が減ると、心まで軽くなりました」と、笑顔をみせるようになった2人。
経済的な安心を、取り戻すために
今後、日本の高齢世帯の3割が都心部に集中するといわれています。マンション価格の上昇が続く一方で、現金収入の乏しい高齢者が増える「キャッシュフロー貧困」は確実に進むでしょう。
老後を“資産残高”で測る時代は、終わりを迎えつつあります。これからは「資産をどのように使い、どう現金化するか」「いま手元にあるお金で、どのように安心して暮らせるか」を考えていく必要があります。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
