◆おかんに認められたら、芸人として終わりですね

辻:例えばさっきの「新入部員」のネタは、(※5)広陵高校野球部の部内暴力が報道された’25年の大会ではできなかった内容だとは思います。ただ、自由すぎると逆にひるんで何もできないのと同じで、コンプライアンスが多少厳しいほうが、逆に新しい表現を生む可能性があるんやないかなとは思ってます。それに「こんなお笑い見せられて気分が悪い」「ニッポンの社長って何が面白いのかわからん」って、批判や否定する人がいなくなったら、もうそれは新しい笑いじゃない気がするんです。
――誰彼なしに賞賛され始めたらお笑い芸人としての消費期限が迫っていると。
辻:そうですね。大阪時代はよく、おとんとおかんが劇場に見に来てくれていたんですけど、おとんは褒めてくれるんですよ。でも、おかんは「下ネタやし、バイオレンスやし。訳がわからん」って、いつも怒ってた。刺激が強いネタってとりあえず否定したがる。おかんに認められたら終わりやなと思ってます。
◆“一点突破”で、客の心を掴む
――難しいバランス感覚が求められますね。辻:そこしか生き残る道がないなというのが本音ですね。結局、僕らは可愛げがあるキャラや華があるキャラでもない。人間性では勝負にならないから意表を突いたお笑いじゃないと土俵に上がれない。“一点突破”の強引な掴みで、お客さんを絶対に驚かせなあかんなと思ってます。芸人としての誇りですね。
ケツ:僕のおかんはいつでも全肯定ですけどね(笑)。
辻:親バカすぎて当てにならへんやん。
――最後に、今後の抱負について教えてください。
辻:コンビとして言うと、中川家さんみたいに舞台に立って、たまにメディアに出るのが、理想の着地点ですね。個人的には、人気野球ゲーム (※6)「パワプロ」を実写化したドラマの脚本のお仕事を今年頂けたので、この流れでいろいろと挑戦したいです。
ケツ:日曜劇場とかの悪役とか面白そうやなと。でも、顔芸のレパートリーが少ないから、あて書きじゃないと無理ですが。
辻:そんな都合のいい話あるかい。悪役でももったいないわ。ズル役で、30秒くらいで速攻死んでほしいですね(笑)。

1986年生まれの辻皓平と1990年生まれのケツによるお笑いコンビ。結成13年目で吉本興業所属。『キングオブコント』5年連続ファイナリスト。「ダブルインパクトツアー2025」が開催予定。斜に構えず真正面からナンセンスを放り投げる泥くさい笑いが特徴
(※1)ダブルインパクト
「漫才か、コントか。いや、どっちもだ!」をキャッチコピーに掲げた、漫才とコント両方で優れている“二刀流芸人”の頂点を決めるお笑いコンテスト。プロ・アマ問わず出場可能で、日本テレビと読売テレビが主催・運営する
(※2)「新入部員」のコント
野球の技術は超一級品であるものの、声が小さいという理由だけで、監督(辻)からシバかれまくる新入部員(ケツ)を描くコント。代表作の一つで’24年の『キングオブコント』の決勝で初めて披露された
(※3)青春時代は野球漬け
辻は、小学生から大学生まで野球漬けの日々を送る。中学生のときに所属していた野球チームで全国制覇を果たす。実弟は、元中日ドラゴンズの投手で、現在は日本体育大学助教および同大学の野球部で投手コーチも務めている辻孟彦
(※4)UNDER5 AWARD
芸歴5年目以下の超若手芸人No1を決めるお笑いコンクール。吉本興業が主催する。’23年初代王者は金魚番長、’25年はあなたとネが優勝し、生姜猫はファイナリストに残った
(※5)広陵高校野球部の部内暴力
’25年1月下旬に広陵高校野球部の寮内で起きた暴力事件。1年生部員が禁止されていたカップラーメンを食べたことを発端に、上級生に当たる2年生が暴力に及んだ。問題がSNSで拡散され、同校やその生徒らに誹謗中傷や犯罪予告が相次ぐ。同野球部は、第107回全国高等学校野球選手権大会の出場を大会途中で辞退している
(※6)「パワプロ」を実写化
大人気野球ゲーム「パワフルプロ野球」の世界をドラマ化。元球児で平凡な新社会人のサクセスストーリーを描く。辻が初めて手がけた脚本作品となる
インタビュー/白武ときお 文/谷口伸仁 撮影/宇佐美雅浩 メイク/mahiro 撮影協力/PROPS NOW(プロップス ナウ)
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

