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ちっとも幸せじゃない…71歳夫婦、通帳を見ながら〈年金繰下げ受給〉を心底後悔。「月35万円の年金」を得るために支払った“大きすぎる代償”【CFPの助言】

ちっとも幸せじゃない…71歳夫婦、通帳を見ながら〈年金繰下げ受給〉を心底後悔。「月35万円の年金」を得るために支払った“大きすぎる代償”【CFPの助言】

受給額は増えたが…年金繰下げの“思わぬ代償”

幸彦さんの場合、年金の受給開始を5年繰り下げることにより、受給額は42%アップ(0.7%×12ヵ月×5年)。原田夫妻の70歳からの年金受給額は、月あたり約35万5,000円となりました。

総務省「2024(令和6)年家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計支出の平均は約25万6,000円でした。また、公益財団法人生命文化センターによると、ゆとりある生活費は約37万9,000円とされています。そのようななか、月あたり35万5,000円も受け取れる原田夫妻は、ゆとりある老後を満喫できるでしょう。

ところが、原田夫妻は「ちっとも幸せじゃない」と嘆きます。

それは、原田夫妻が年金受給開始後も「節約生活」を続けていたからでした。

というのも、5年間で身に染みついた“我慢グセ”は簡単には抜けず、お金を使おうにも「もったいない」「今後なにかで必要になるかもしれない」という不安が頭をよぎります。そのため友人からの誘いも、「〇日分の食費が1回で消えるのか……」と考え、断ってしまうのです。

思えば幸彦さんは年金を増やすことに必死で、増えたら「どう生きたいか」を考えていませんでした。年金は増えたはずなのに、心の余裕はむしろ減ったような気がします。

思ったほど増えない!? 年金繰下げ受給の“落とし穴”

原田夫妻は増額分でゆとりある生活を送ることができると思っていましたが、65歳から70歳までのつなぎ期間で予想以上に物価も値上がりしたため、節約したのに預貯金は1,000万円以上減ってしまいました。5年におよぶ必死の我慢も虚しく、老後の資産への不安は消えなかったのです。

また、年金にも税金が課せられ、社会保険料が引かれます。幸彦さんも、年金受給額が増えた分控除される額も増え、受給額は月に約10万円増えましたが、手取りとしては月に8万円ほどの増加となっています。

そして、ひとつ解決してもまた何か他の不安が出てくるのです。増やしても使えない状況に加え、「元を取れるまで長生きできるのかな」という新たな不安も生まれてしまいました。悩みは尽きません。

原田夫妻は、結局いまも、年金受給前と同じく慎ましく暮らしています。いまさらですが、65歳から年金を受け取っていればもっと気楽に使えていたかもしれないと後悔する幸彦さんでしたが、実際はどうかわかりません。

人生の後半には、お金の「貯め方」と同じくらい「有意義な使い方」も大切だと痛感する原田夫妻でした。

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