息子の告白に絶句――父親が知った詐欺被害の全貌
電話口の健太郎さんは、ついに真実を打ち明けました。
「実は…50万円借金しちゃったんだ。投資で稼げると思って…でも全然うまくいかなくて」
星野さんは一瞬、言葉を失いました。倹約に倹約を重ねて送り続けた仕送り。それだけでは足りずに、息子は借金までしていたのです。
「どこから借りたんだ?」
震え声で尋ねる星野さんに、健太郎さんは消費者金融の名前を口にしました。さらに衝撃的だったのは、健太郎さんがその借金を返済しようと、アルバイトを掛け持ちし始めていたことでした。
「授業も休んで働いているんだ。でも全然追いつかなくて…もう3ヵ月も学校にまともに行けていない」
星野さんの頭の中は真っ白になりました。息子の将来を案じて送り続けた仕送り。その息子が詐欺に遭い、借金を抱え、学業も疎かになっている現実。
「なんてことだ…」
星野さんは電話を握りしめながら呟きました。
健太郎さんによると、「AIが自動で取引する」と言われたFXアプリは、最初の1週間だけ利益が出ているように見せかけていました。しかし、その後は一切利益が出ず、むしろ元金が減り続ける一方。問い合わせをしても「もう少し様子を見てください」と言われるばかりで、ついには連絡が取れなくなったそうです。
若い世代に拡大する詐欺被害―統計が示す深刻な実態
健太郎さんが遭った被害は対面勧誘の連鎖販売取引(いわゆるマルチ取引)に類するものです。マルチ取引の相談動向は国民生活センターが公表しており、2024年度は4,117件。昨年比マイナス1,037件で減少傾向にあります。
しかし、警察庁の資料によると、非対面型の詐欺被害は急増しています。2024年の特殊詐欺の総認知件数は21,043件(+10.5%)、被害総額は718.8億円(+58.8%)。犯行の最初に用いられたツールは電話79.0%、メール・メッセージ10.0%、ポップアップ表示8.8%でした。
年代別では、若い世代への拡大が顕著です。警察庁SOS47の最新広報(2025年上半期・暫定値)は、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺では、高齢者以上に「若い世代にも被害が広がっている」と明記。内訳はこのようになっています。
・オレオレ詐欺…20代:915件(+1,015.9%)、30代:988件(+918.6%)と急増
・架空料金請求詐欺…20代:487件(+97.2%)、30代:296件(+53.4%)と拡大
一方で特殊詐欺全体に占める高齢者(65歳以上)の割合は52.9%(−17.8pt)まで低下しています。
若年層を狙う典型手口としては、以下のようなものがあります。
・SNS・マッチングアプリで接触→外部アプリに誘導し投資名目で送金させる
・「絶対に儲かる」「AIが自動で稼ぐ」など断定的な誘い
・資金の乏しい学生に借入(学生ローン等)を勧める
